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2016年11月30日水曜日

10月のハコガメ

 


 枯れ葉舞う季節となりました。ご無沙汰しております!三日前に購入したインフラ球が勝手に消灯を繰り返し、キレそうになっている管理人です。日本から戻ってからというもの、日々のよしなしごとに追われておりこちらを更新することができずにおりましたが、ボアコン3匹、スナボア1匹、トルコナキヤモリ2匹、皆元気にしております(ヤモリの「すあま」だけ給餌強化月間中)。例の恐竜もハッチしてからようやく1年目を迎え、巣の外に自力で這い出して落ちている枝や葉などを使い、疑似的な狩りとおぼしき行動を見せるまでに成長してきました。巣立ちの日ももう、すぐでしょう(希望)。

 写真は、すこし前のものになりますが3月のライオンならぬ「10月のトウブハコガメ」です。10月と申しましても目撃されたのは30日だったので、ほぼ11月といえます。写真の背景にあるマンションに住む管理人の友人が「外の階段に見た事のないカメがいる」と連絡をくれた時のものです。例年なら雪のちらつく日も出てくる時期なのでハコガメが歩いているとはにわかには信じがたく、また出没場所も見て分かるとおり住宅街と車道にほど近い場所だったので、非常に驚きました。二年連続でカメ助け(進行方向に向かって一番近い緑地にリリース)という徳を積むチャンスが訪れたことに感謝ですね。

 このカメが面白かったのは、甲羅の中に隠れていたのに、リーフブロワー(落ち葉を飛ばして道を綺麗に保つ、大型のドライヤーの様なマシン)の音が近づいてきた瞬間階段から飛び降り(!)、ダッシュで逃げ始めた事です。一度甲羅に引っ込むと長時間出てこないカメが多い中、こうしてサッと状況判断している所をみると、見かけによらず案外年をとった個体なのかも知れないですね。感心した出来事でした。


2016年6月2日木曜日

帰米しました。

水面に突き出したコンクリ片の上で休むヒガシニシキガメ C. p. picta (クリックで拡大)


 あっという間だった日本滞在を終え、無事帰米しています。不在にしていた間にアメリカヒキガエルの繁殖期は終わり、アイリスの開花も終わり、季節は一気に初夏へと変わっていました。去年のだいたいこのあたりの時期にはトウブハコガメに遭遇できていたので(カメ1カメ2)それを期待しつつ毎日、朝夕近隣を歩いていますが、今年は運がないようで1匹も発見できていません。トウブハコガメは派手なカメに見えますが、自然の中にいると木漏れ日の中に埋もれて、じっと目を凝らさないと見つけられないから本当に不思議です。それにあっ!と思って近寄って見ても、カメに似た形の土くれだったり、風化した切り株だったりすることも多いのです。

 その点、行くところへ行けば100%遭遇できる水ガメの存在には助けられます。ナンも見つけられなかった日はとりあえず湖をまわって水ガメを見て、満足して帰ります。上の写真は数日前、前から気になっていた荒れた農地の水路に足を伸ばした際に撮ったもの。やはり思った通りの時間に、思った通りの場所に居てくれるカメ達。この水路は昔ここ一帯を所有していたお金持ちの農家が掘ったもののようですが、土地の持ち主が死んでからは誰も手入れをする人がおらず、少しづつ荒れて行っているようです。諸行無常ですね。


使われなくなった水路はカメ達の楽園に


 諸行無常といやあ、日本では母方の故郷である山口県まで足を伸ばす機会がありましたが、所謂「過疎化するにっぽんの地方」の例に漏れず、山の少し奥の方へ入れば荒れ放題の休耕田や、参拝客の来なくなった寺などに遭遇することがしばしばありました。薄暗い竹林の中の沢で、倒壊したまま修復されることなく折り重なった墓石の下からタゴガエルの静かな独唱が聞こえてきたりして、こうして人が消えた野山を次々と楽園に変えていく両爬の姿が思い浮かべられ、侘しい様な、そこはかとなく愉快なような、不思議な気分となった事を覚えています。

 「つづき」以降に、今回の帰省で撮った日本の(たぶん一部の方にしか面白くない)写真を少々アップしたいと思います。


2015年5月17日日曜日

トウブハコガメ2匹目


 運転中、視界の端に一瞬写ったものがカメだった気がしてUターンしたところ、またもやトウブハコガメと遭遇しました。今年はハコガメの当たり年なんでしょうか。前回に続き車道を今まさに渡ろうとしているところでしたが、通勤時間帯前後で交通量もあったので、見つけるのが少し遅かったら死んでいたかもしれません。カメは、助かってラッキー、自分はカメを見られてラッキーでした。こんどのはまだまだ若そうなオスで、また裏の保護林へリリースしました。本来であればカメの進行方向だった先にある緑地に移せればよかったのですが、そのためには当日発砲事件があって死人が出たばかりの団地を通らないといけないという、実にアメリカ的な理由によって断念せざるを得ませんでした。


 保護林にリリースする前に記念写真。ハコのフタがぴっちり閉まって、この状態だと時には40分くらい待っても出てこなかったりするので、非常に根性のある生物です。甲羅の前側の縁がケロイド状にボコボコになっています。たまに、種やオスメスに関係なくこうなっているカメを見かけますが、人間のすぐ隣を棲み場所に決めたカメの場合、生活のなかで事あるごとにコンクリートや装飾用の石材でできた段差や階段、用水路の縁でこすったり、そこにばい菌が入ったりして徐々にこのようになっていくのかなと考えています。ペットショップにいたら「汚いカメ」という一言で終わってしまいそうな状態ですが、野生のカメが一生懸命、与えられた場所でもがきながら強くたくましく生き延びてきたという証でもあるかもしれません。


 甲羅の写真ばかりではアレなので・・・最後に、二日前近所の友人の庭に表れたハコガメの写真をば。このカメはアダルティーなオスでしたが、甲羅の山吹色もさることながら上半身もばっちりオレンジ色に発色していてなかなか綺麗でした。これまで見つけた3頭に関しては、全て州の両・爬保護団体のトウブハコガメ専用窓口に報告していますが、自分も含めた一般人のこういう草の根的地道な作業のつみかさねによって近隣のハコガメの数が少しでも増えてきているのだとしたら、そしてその結果が今回こうして身近に見られたカメ達なのだとしたら、大変嬉しいことです。

2015年5月14日木曜日

案外近くに居たらしい。


 もう、夏ですね。この間までさむいさむいと言っていた北バージニアですが、もう日中最高気温が30℃に迫ろうとしています。それだけでなく湿度もかなり上がってきていて、むし暑いのが駄目な管理人は日照の少ない時間帯を選んで姑息にうろちょろしていたところ、この間の健康診断で「ビタミンD不足」と言われてしまいました。仕方なく人間用のサプリメントを購入しようか検討していますが、あれって結構お高いですよね。そんな時目の前にネクトンやらレプティバイトやらのビンがコロコロしていたりすると、変な考えがよぎります。

 そんな訳で最近は日中でも積極的に表へ出るようにして居たところ、今日の昼頃、野生のカロリナ(トウブ)ハコガメに遭遇しました。我が州でもかなり生息数が減ってきているとされるこのカメ、自分も当地に3年ほど住んでいて、生で見るのは初めてだったのでかなり興奮してしまいました。こういう生き物は大抵探してもなかなか見つからないものなので、特に嬉しかったです。見つかったのが自宅の裏庭に等しいような住宅地から至近距離の道だったのでびっくりしましたが、灯台下暗しというか、案外ずっと傍でひっそりと暮らしていたようです。大きく丸々としたなかなか立派なメスでしたが、甲羅の一部にいっぺん、バキッと割れたような跡があったのが気になりました。

 このカメが居たのは近隣の比較的大きな道路の脇で、交通量も一定数あるようなところです。ひとまず保護してから、カメの向かっていた方角の緑地帯にリリースしましたが、移動させている最中思い出したのは3年ほど前に読んだ話でした。NASAのエンジニアが趣味で行った実験によると、被検地となったアメリカの交通量の少ないハイウェイで、全体のおよそ6%のドライバーが路上の爬虫類をわざと轢いていくことが分かったというものです。それに対し生き物を助けようと車を降りた人の率はヘビで1.7%、カメで4%にとどまりました。カメの場合、別の見方をすれば96%の人はカメを(故意に轢いたりはしないものの、)路上に放置したまま立ち去っているとも言えます。


 カロリナハコガメの場合、近年の野生個体数減少の大きな原因というのが生息地の消滅と、自動車や農耕機との接触事故とすでに分かっています。毎年多くのカメが交通事故で命を落としたり、たまたまラッキーで助かったとしても、障害を負って痩せた状態で見つかり保護されるものもいます。そういうことで最近ではハコガメに限らず道路を横断しようとしている爬虫類が居た場合、道路外へ(生体の頭の向いていた方向へ)移動させて放すことが推奨されるようになりました。生息地がいつの間にか開発されてしまった彼らにとってはとても難しい時代になったかもしれませんが、なんとか生き延びて、今年もがんばって命を繋げていってほしいものです。


2015年1月28日水曜日

ゾウガメを飼いたい人へ

今日の午後、ボランティア先にて。新しいフルスペクトルランプの下で談笑するアルダブラゾウガメ達。 


 ゾウガメを「素敵な生き物だ」と思っている人と、「それほど素敵でもない」と思っている人と、世論は二分している感があります。個人の感覚から言えば、前者の方が人口の9割9分を占めているので、ゾウガメ達の未来は安泰なんですが、その陰で身もだえしている後者の方には「仕事で毎日ゾウガメの世話をしている」という稀有な状況にある人々や、「誤ってゾウガメをペットにしてしまった」人々、もしくは「誤ってゾウガメをペットにしてしまった人の家族かなにかで、苦しめられている様をつぶさに観察した人」が含まれています。ともあれ、動物園でフラフラしていると月に1回くらいは「こういうカメって、お家で飼えるの?」という質問をビジターから受ける事に気が付きました。アメリカ人がとりわけ楽観的だからゆえの素朴な疑問なのでしょうか。その質問に答える前に、不肖管理人のゾウガメに対する雑感を少し書いてみたいと思います。

 私の場合、月に何回かゾウガメの世話をするうち、これらの生き物達は「制御不可能なアーマード・うし」だと思うようになりました。なんというか話しても、一切分かり合えない感があります。現金輸送車みたいな体をしていて体力500、魔力(知力)5、防御力3億5000万という感じで、こちらの攻撃はほぼ一切効きません。基本、突進してきたら止められないし、当人たちが動かないと決めたらテコでも動かなくなります。おそらく本物のテコを持ってきてもかなり頑張らないと動かせないでしょう(上の写真に写っている右の個体は体重250キロ)。そしてそのわりに嫌に素早く背後から忍び寄ってきたりするのでたまに真剣に恐怖を覚えます。仮に彼らに『オレンジ色の靴紐を、にんじんさんと間違えて♪』というような牧歌的動機があったとしても、うっかり足を踏まれるかもしれない人間側としては大変恐ろしいものです。そして、うおおおこっちへ来たぞ、と右へ左へしているうちにいつの間にかドアの前に陣取られ、えげつなく脱出経路を塞がれて絶体絶命となってしまうのです。

 もう一つえげつなきことと言えば、そのクソのでかさです(←『ウンチの大きさ♪』という雰囲気ではない)。彼らは、そのクソを腹甲の下に巻き込みながら部屋中をまんべんなく動き回ります。彼らが動き回った後の温室の床は、さながらジャクソン・ポロックの現代絵画のよう。特にオスの下腹部あたりはへっこんで「クソポケット」と言える構造になっているので、腹の下にたっぷりと汚物を付着させたまま、長時間に亘る制作活動が可能となっています。もちろん、水場にクソをする事もあります。動物園のゾウガメ達は健康のため、普通の野菜以外にも牧草をふんだんに与えられているのですが、結果、多くの植物繊維質を含んだクソが水の中でふやあ~ふやあ~っとなって、排水しようにも排水口が、その繊維で一寸の隙も無くガッチリと塞がれた状態になるんですね。だから清々しい朝の最初の作業が「腕を肩までウンコ水につかって排水口の繊維をとる(※繰り返し)」になることもざらです。それからオス達のやたらなる性欲の強さも、まったくもってえげつなきことです。これは、人間の主観によるものなので彼らにとってはひどく不公平ではありますが、温室のオスたちが逃げ回る小さなメスを事あるごとに追まわし、ブオーーーブオーーーとハッスルしている、そのくせ彼女のエサは暴力的にぶんどるのを見ていると、なんだかなあという気がしてきます。岩石に強い食欲と性欲、いわゆる「生存欲求」が宿った状態が、ゾウガメといういきものなのであります。

 なんだか言いたかった事がはっきりしなかったかもしれませんが、とりあえず、もしこれからゾウガメを飼いたいと思っている人がいたなら、ひとことやめておきなはれと申したかったのです。爬虫類が大好きな自分にとって、ワニよりも、アナコンダよりも、飼いきれる気がしない生物がゾウガメです。飼育を検討する前に、まずは1か月毎日仕事帰りに近隣の動物園のゾウガメ温室に通い、そこにいる生き物を観察してみてください。それが無理なら、毎日2時間延々腕立てとスクワットを続けながら、純粋にゾウガメの事だけを考えていられるか、自分を試してみてください。それを一ヶ月間続けてください。仕事もあるのに毎日なんてムリ!と思うかもしれませんが、実際ペットのゾウガメが大人になれば、それと同じくらいの時間を、世話という名の肉体労働に費やすことになるかもしれません。1か月も彼らの生活を見ていたら、思いのほか退屈になってくるかもしれないし、手からニンジンをあげるのだって、半年もやれば飽きてしまうかも知れません。それは、あなたにとって「ゾウガメが日常化した」証です。そしてその「日常」は、200年間続くのです(世話をするあなたが死んだ後も)。そこらへんを、もう一度思い出しながら、ゾウガメと共に暮らすとは一体何を意味するのか、飼う前にちょこっと考えてみることをおすすめします。

2014年11月12日水曜日

かわ・ハラー「かわいい」と言う問題

人間の考える動物界における「かわいい概念」の代表例 - 砂のお風呂に入る、宅のハムスター


 ヒトが生き物を「かわいい」と言う時、それは同時に「かわいくない」生き物の存在を暗示する。例えば一般社会でいえば、上の写真の様なハムスターは「かわいい」とされる。小さくて、白っぽくやわらかい毛並みがふかふかで、足が短く黒目がくりくりしていて、木の実や葉っぱを食べ、人間と仲良しだからだ。一方、「かわいくない」生き物の典型的なものは、だいたい今挙げた形容詞の逆を考えると分かりやすい。即ち、大きかったり、黒っぽくて、節くれだった足をゴソゴソとさせ、瞳はギラギラと闇夜に輝き、固い毛並みかもしくは無毛で、食事は血や肉を貪り、人になつかない。生き物を「かわいい」と言う時、私達は無意識のうちに自分達にとっての良し悪しの判断を下しているのである。自然物である生物に対して「いい」と「わるい」を、自分の尺度で勝手に裁いているという事になる。

 我々の大好きな両生類や爬虫類の場合、どことなく親近感を感じさせるカメやカラフルなカエル、半分家畜化された一部のヘビ、トカゲ、ヤモリなどの場合はまだマシだと言えるけれども、それでも一般的には「かわいくない」に分類される生き物達だ。「かわいい」という言葉は本来、言い手の存在を脅かす可能性が低そうで立場的にも劣勢のものに対して使われ易い言葉なので、「ひょっとすると脅威になる得るかも」と想像をかきたてる両爬の場合、根本的に不利だ。もちろん「かわいい」のセンスは千差万別なので彼らにも愛好家が沢山いるが、中には逆を行って、この両生類や爬虫類が世間で「かわいくない」とされている前提を踏まえ、だからこそ好きなのではないかと思わされる人も存在する。「かわいくない」「こわい」とされている生き物を愛でている自分、という構図を作ることが目的の人も居るかも知れない。そんな時、両・爬は自意識補完薬としても作用するのだ。

 話をもとにもどすと、このように「かわいい」というアイデアはかなり主観的かつ、自動的に「かわいくない」側への差別を促すという倫理上の欠点がある。これには実害もあって、最近読んだこの話によると、たとえば自然環境や、生物種の保護活動においても、人々の関心や寄付は「かわいい」「きれいな」動物・・・例えばトラやクジラ、パンダやウミガメ、ホッキョクグマなどに集中し、それらの動物の存在を根底からささえる「縁の下の力持ち」の、小さな植物の仲間や昆虫類、クモ類、ヘビやカエルなどは無視される傾向にあるという。この現象は、人間の美的感覚が巡り巡って生物の多様性を失わせる可能性があることを示唆していて、危惧されることなのだ。

 まとめると、何かの生き物を見て「かわいい」という事は、スーパー上から目線なだけでなく、自然の神秘漲る「環境」に対して我々ヒトの粗末な尺度を押し付け、あわよくばその良し悪しを判定してやろうと考える傲慢、さらに「悪し」の側に分類されようものならいつの間にか滅びてようが知ったこっちゃねーという、あんまりな人類の暗黒面の発露となりかねないのである(※あくまで管理人個人の考えです)。よって今日、生き物に対して安易に「かわいい」という事は、ハラスメントの一種であると勝手に決定した所存であります。生き物をやたらと可愛さメインで語っていくことがあたかもめちゃめちゃ恥ずかしいことみたいな社会通念を作りませんか。本能を抑え込む最もパワフルな原動力は「恥ずかしいと思うきもち」だと思うので。

 しかしなんで、ここまでガタガタと能書きを書いたあげく両爬虫類の大大大の味方である管理人がロボロフスキーハムスターを3匹も飼っているのか、それはもう、理屈抜きでかわいいから生き物として大変興味深いからです。

一般論的「かわいくない」の一例、バルカンヘビガタトカゲ(Ophisaurus apodus)

お願いだからそんな目でこっちを見なさんな。

2014年10月31日金曜日

歳をとった生体の世話について、気付いたこといくつか

ある日の近所の公園にて

 管理人が初めてペット店から買ってきたガータースネークは、今思えばたいした世話もしなかったのに11年ほど生きてくれた。連れてこられた当時、そのヘビは既に亜生体以上の大きさだったので、ひょっとするともっと年をとっていたのかも知れなかった。ガータースネークはヘビとしては比較的寿命の短いグループなため、最後の頃は鱗の感じや動きも明らかに「おばあちゃん」という風になり、食欲はあったがだんだんに空気が抜けたようになって、そして枯れ葉が枝からぱらっと落ちるような感じで死んでいった。両生類、爬虫類は時に、びっくりするほど長い月日を生きる。飼育下にある場合、野生での平均的な寿命を超越して長生きすることもしばしばある。このことを思い出すきっかけになったのは、最近動物園で老齢個体の世話を手伝う機会が多くなった事だ。基本的に一匹一匹が沢山の適切なケアを受け、大切にメンテナンスされるそういう場所では生体はとても長生きで、40年近く園で展示動物として働いている(?)カメやトカゲやヘビなどがざらにいる。そしてそれを取り巻く人達も、彼らが最後まで生命を全うできるよう、色んな工夫を凝らしていることを知った。その中から4つ、重要かと思うポイントをメモした。最近、飼っている生き物がなんとなく年をとってきたなあと感じる他の飼育者の参考にもなるかもしれない。高齢の両生類・爬虫類のケアは、管理人が興味を持っていることのひとつでもあるので、今後も新たに思いだした事があれば付け足す。

1.ハンディキャップがある

 歳をとると出来ないことが多くなるのは人間と全く同じ。比較的よく見るのが、目が見えなくなる個体。ヘビなどに多いが、外見的に明らかに水晶体が混濁しているものの他に、見た目はあまり変わりないのに実は見えてないというケースもある。両爬虫類は優れた嗅覚を持つものが多いのでそれでも問題なく生きていける事が多いが、念のため餌や水は口の前まで持っていって、きちんと摂れているか毎回確認することが必要になる。また熱を感知できるボア・パイソンの仲間は、視覚を失ったことによって餌と人の手の区別がよりつきにくくなる場合もあるので注意する。

 筋力の低下や関節炎も比較的よく見られる。これは特に樹上棲種において問題になる。体をうまく支えられなくなったり、関節にかかるプレッシャーが不快感になって、のぼり木などにあまり登りたがらなくなる個体もある。その場合、ケージ内容は模様替えをして、バリアフリーなレイアウトにし、わざわざ木に登らなくてもバスキング出来るようにしたり、水入れは浅くしてすべり防止の為に中に人工芝を入れてみたり、工夫する。樹上棲ヤモリなどは、平らな面が地面と水平になるように設置した角材を入れたりして、楽にとまっていられるようにする。

 かなり老化が進んでくると、多くの個体はハイドボックスの中など特定の場所で静かに一日を過ごすようになり、糞もそのままそこでしてしまったりするようになる。不衛生にならないように、数日に一度は個体を動かして下に汚物がないか確認する(ついでに軽くハンドリングして体をほぐしてやる)。脱皮等も失敗しやすくなるので手伝う。

2.水分は全てを助ける

 仮に乾燥地帯出身の生き物であっても、水分補給は頻繁に(できれば毎日)行う。水入れの器の水換えをするだけでなく、霧吹きなどで軽くミスティングをする。適切な水分補給は呼吸器や循環器、泌尿器などの負担を軽減するだけでなく、先に書いた脱皮不全などを予防することにもなるので、個体が若かった時以上に気を付ける。蒸れには注意する。

3.食餌内容に気を付ける

 牙やクチバシの角質が摩耗して、上手にエサが取れなくなる個体が出てくる。歯が定期的に抜け落ちるタイプの生物も、再生速度が遅くなるので、そのような状態であっても食べられるようにエサの内容を検討する。本来の生態に即した餌を控えめ・こまめに与えることが重要になる。両生類などは特に、なるべく代謝を一定に保つようにする。

4.苦痛を取り除く

 最初に少し書いたように、生体が野生での平均寿命を大幅に超えて生きていると、普通では見られなかったような障害や、病気にかかるようになったりする。腫瘍などはその代表選手かもしれない。明らかにコブの様に盛り上がってくる腫瘍などは特に、触るとどことなく苦痛を感じているようなそぶりを見せる個体も居るので、なるべく触らないようにし、程度によっては治療、または安楽死の選択も必要になるかもしれない。

2014年10月6日月曜日

守るべき隣人

 突如、自分はボールパイソンも飼ってないし、コーンスネークも飼ってないし、繁殖もやってないし、このままイモリ~イモリ~みたいな記事ばかり書き続けていたら、そのうちブログを訪れる人が誰も居なくなるのではないかという危機感にとらわれた。というわけで、このあたりでカメの事でも書こうと思う。ちょっと画像けれど、粗いが下の写真を見てほしい。


 これは先月24日の、南バングラディシュのひなびた漁村での光景だそうである。カメはここの溜池で飼われていたバタグ―ルガメ(ヨツユビカワガメ/ノーザンリバーテラピン、Batagur baska)のメス。右で泣いてるおばあさんは、もう明らかかもしれないけれど、16年間池の大ガメを世話してきた「飼い主」である。

 バタグ―ルガメは主に南アジアの河に棲む大型のカワガメで、生息地の破壊と、現地では卵や肉が食用とされる事で急激に数が減り、サイテスI類、IUCNレッドリストでは「絶滅寸前」のカテゴリに入れられているとても貴重なカメだ。写真のカメは、北米テキサス州に拠点を置き科学者とボランティアによって草の根的に運営されている「タートル・サバイバル・アライアンス(TSA)」のアジアチームによって先月、この漁村でひっそりと飼われていたことが発見されたのである。TSAはこうした場合、持ち主にお金を支払って、購入した個体を国内の保護施設へ移送する。施設には、こうして個人宅や食肉市場から時間をかけて、手作業で一匹一匹集められた十数匹のテラピンたちが育成されており、既に繁殖実績も上がっているという。

 アジア全域に見られるカメ食は、われわれ日本人の捕鯨文化と少し似ていて深く長い歴史があり、完全に途絶えるまでには時間を要するだろうし、その間、今すでに減少傾向の多くの亀種は絶滅に追い込まれていくだろうと思われる。ただ、こうして好んで消費することと同時に、カメが大好きで大好きでたまらないのもまた我々アジア人であると思う。それは中国人の異様ともいえるカメへの情熱を見ていても思うし、そもそも人間は、ちょっとでも気味が悪い、汚らわしいと思っているものは捕まえて食べようなどとも思わないはずだ。水と田んぼを愛し、自然のおこぼれをもらいながら生きてきたという意識のあるアジア人にとってカメは本当に親しみを感じる存在であるし、これから徐々にでも「愛すべき生き物、ときどき食べ物」から「守るべき隣人」への意識の転換が起こってくればいいなと思う。

2014年8月13日水曜日

バイバイ、マック


 先日うちに来たカラフルおもしろい寝相のニシキガメについて。 

 野生のカメの回復力はすごくて、口内の傷ももうほとんど癒えていたこのカメ。ついうっかり「マック」という名前まで付けてしまい、このままでは情も移るだろうしヤバいなーと思っていたこの2週間でしたが、今朝湖まで連れて行って放してきました。泳ぎ去る所をカメラに収めようとモタモタしている間にあっという間に見えなくなってしまったので、写真はきのうの朝水換えをしてやった時に撮った、上のが最後となりました。空き家になったコンテナがちょっと寂しい。

 しかし一歩離れて見てみればこれだけ遊泳力のあるカメなので、横幅80センチ程度の容器ではどう考えても狭すぎて、見ているこっちも気づまりだったからこれでサッパリした。外で自由に生きてきた生き物をケージや檻に入れる場合、その内容をたとえどんなにがんばって整えた所で、彼ら本来の暮らしぶりとは似ても似つかないようなものになってしまうことが多い。好きで、いつまでも眺めていたいカメを同時にいじめることにもなってしまうのだ。水ガメ好きには結構よくあるジレンマかもしれないけれど、バランスをとるのが難しいと感じる。その点、ヘビは多少小さ目のケージに入れていてもそれほど気の毒と思わないのが不思議だ。ともあれニシキガメに関しては飼うととても楽しい事が今回分かったので、いつか運よく子亀でも見つけられたら長期飼育に挑戦してみたい(今のところ、季節的に見かけるのはカミツキガメの子亀ばかりだけど)。

 秋に向かって短くなりつつある一日を無駄にするまいと、夕方またせっせと雑魚釣りにせいを出していたら今度はニオイガメが釣れた。このカメには殆どダメージがなかったのでそのまま逃がしたけれども、湖の神様は最近やけに気前が良いようだ。この調子でいくとマック2号がひっかからないとも限らないので照明一式やコンテナは仕舞わずにしばらく庭に置いておこうと思う。

2014年8月9日土曜日

マックの寝相


 先日拾ったニシキガメついて。

 日本に住んでる時からけっこう長い事ミズガメを飼ってますが、こういう寝相のカメには今まで遭ったことがなかった。飼ってたのがイシガメの仲間ばかりだったせいかも知れないけれど・・・ヌマガメってこんななんだろうか(北米ヌマガメオーナーの皆さん、どうですか?)。それともうちのイシガメ達も、自分の見てないところで密かにこうやって寝ていたのかなあ。因みに比較的近縁なキボシイシガメは動物園でよく世話してますが、こんな風に寝て居る所は見たことがないです←生活様式が大分違うのであまり参考にはならないかな。

 しかし、確かにこの寝方なら水中の変化にすぐに気付けそうだし、何かあったらすぐにスクランブル発進できそうだ。野生生活で身に付けた知恵なのか。


 頭までひっこんで完全に爆睡してます。ちょっと水槽を覗いたくらいでは起きません。午前中の遅い時間に給餌タイムがあり、昼過ぎ頃にまた見るとこうして爆睡していることが多い。いわゆる「腹ごなしに昼寝」というやつなのか。

2014年8月6日水曜日

"1902 vs Today"


 ひとりぼっちのジョージは死んでしまったけれど、世界にはまだまだ知られざるゾウガメのスター達がいるらしい。きのうたまたま目にしたセントヘレナ島のニュースによると、島で飼われているゾウガメの「ジョナサン」はもしかすると陸上で最も年取った生き物の一員か知れないという。上の写真は両方そのジョナサンを写しているが、カラーのが今年ので、モノクロの方は1902年のものである。島の公式の記録によるとこのカメは1882年にセントヘレナ島に連れてこられ、その当時既に成体であったのならばおそらく190歳弱であると推測されている。長い長いカメ生の間に視力を失い、鼻もにぶり、クチバシは殆ど摩耗して食事に補助が要る状態だそうだが、食欲はバッチリで運動能力も周りのカメと比べて遜色はないという。島では人気者らしく詩人が来て彼の為のポエムを作ったり、浜辺にサンゴでできた小さな像が建てられたりしているらしい。ぜひ頑張ってゾウガメの長寿記録を塗り替えてほしいものである。

 ところでこのジョナサン、運動能力のほかに衰えていない身体機能がもう一つあるんだそうだ。リクガメに馴染みがのある人ならすぐ思い当たるかもしれないがそれは「性欲」で、同居している小さなメスのゾウガメを追い回す事に日々余念がないそう。自分もボランティア先の動物園で、100歳をを越えたアルダブラゾウガメ達の世話をするので思うが、年をとっても尚、メスと見るやガムシャラに突進してのしかかっていくゾウガメのオス達のあのアプローチが女の子にウケるとは到底思えない。ただ、「ジョナサン」専属の獣医師に寄れば、健康状態の一番のバロメーターである性欲が健在なのはカメのオスにとって非常に良いサインなのだという。人間のよく言う「よわいを重ねた落着き」とは無縁かもしれないが、最後まで子孫繁栄という命題のために、まさしく突進していく姿はある意味かっこいいのかもしれない。どうでもいい余談だがアメリカもフロリダあたりではリタイア後の老人達が集う「介護村」が存在し、最後まで子孫繁栄という命題のためにゴルフカートで合コンをする人間たちの姿が見られるそうである。あないみじ。

image source: Bored Panda

2014年8月3日日曜日

今日のマック


 サイドバーにリンクコーナーを作ろうかと思っています。それと並行して相互リンクしてくださる方を募集したいと思います。もし、爬虫類や両生類が大好きで、ご自分でも爬虫類のブログかウェブをされていて、仲良くしてやってもいいぞ!という方がおられたら、下のコメントからでも、メールからでも、ご連絡ください。または今後、密かに通っていた管理人があなたのブログにいきなりコンタクトしてくる可能性もあるので、その場合は出来ればやさしい目(笑)で見守ってやってください。

 先日のニシキガメはいいスピードで回復してきています。さすが野生のイキモノと言った所か。この大きさのせいかはたまた腹甲の色のせいか、なんとなくチーズバーガーを連想させるカメなので、便宜的に「マック」と呼んでいます。餌は今のところミミズ、レプトミン、魚の切り身、ロメインレタスを主にしていますが、このカメはペレットは慣れないためかあまり食べません。一番反応がいいのが釣り餌に使われるミミズなので、今後また釣れちゃうんじゃないかと心配しています。飼育水は毎日全換水、3日目毎に半日ほどの強制甲羅干しタイムを挟んでいます。

2014年7月31日木曜日

借りたら返すという発想


 ここ最近ちょっと思うところがあって病院に受診したところ、高確率で脳に微細な腫瘍があることが分かりました。幸いあまり難しい部位ではなく、多分薬物でトリートメント出来るタイプの奴とのことですが、今後成長する可能性があるのと、管理人はどちらかというと外科指向なので、できれば手術をと考えています。これから精検して、日本で脳外の先生をしている友人にも意見を聞いて、経過を観察する予定です。11/10追記:専門家曰く放置してもOKなやつとのことなので、放置プレイ決定しました。

 にしてもこうして時折再確認させられるけれど、人生は有限ですね。どうせそのうち寿命は尽きるのだから、その前に何か「いいこと」をしておきたい、そう漠然と思いながら過ごしてきたここ5年くらいでした。爬虫類のことに関しても、いきなり動物園で有志スタッフなどをしようという気になったのも、こうすることで微力ながらも爬虫類の保護(=「いいこと」)を手助け出来るんじゃ?という、かなり単純な動機が頭のどこかにあったためです。自分は人生のはじめの25年間、生き物に関してはどちらかといえば所有する事ばかりを考えて、売ったり買ったり時には死なせちゃったりと、エゴの赴くままに生きてきたと思っているので、次の25年は沢山借りのあるこの爬虫類という生き物に対して、ちょっとずつでもそれを返していく時間にしたいと考えています。まあ25年きちっと生きられればの話だけど(あ、終末関連の話題に興味のある方は、よければこの話も読んでみてください→「死ぬにあたって。若き爬虫類飼育者の場合」)。


 とまあ内心あまり気が休まらない一週間を過ごしていたのですが、ふと息抜きに釣り道具持って近所の湖へ行った所、よかサイズのニシキガメが釣れた。バス用の針にかかってしまったので口の傷は小さいものの、けっこう血が出ていたので、うちで手当をしてやり今裏庭の減菌コンテナで泳いでいます。爬虫類に貢献!とか言ってる傍からこれかよといった所ですが、用心深いニシキガメが釣れること自体は結構珍しいので、湖の女神が「これでも見て元気出せよ」と寄越してくれたのだと勝手に解釈することにしました(・・・)。

 カメは手で持つと小ぶりなハンバーガー大の個体ですが、前足には立派な長いツメが生えそろい、既に成熟したオスと分かります。雰囲気的には多分4、5歳くらいの若いカメという感じ。野生のニシキガメの繁殖期は春と秋なので、傷が癒えたら遅くとも秋口前にはもといた場所に戻す予定です。何らかの理由でこんなふうに野生のカメをキープ&リリースする場合、繁殖や冬眠といった彼らの中でのメジャーなイベントにかぶらないよう考慮する事が重要になってきます。特に冬までに十分な時間的余裕があることは必須です。

2014年6月6日金曜日

池で流行りのベーグルデート


 身近にいる特定の生き物へスーパーフォーカスした愛情を、パンくずやほぐしたシャケに等価交換してばら撒いている人々がいる。子供のころ、日曜の公園でよく見た「ハトおじさん」や「ネコおばさん」だ。子供の倫理感では、野生の生き物や飼い主のいない猫を飢えさせないことは単に「いいこと」だったから、素晴らしい人達だなあ、といつも感心していた。それと同時に餌に向かって我さきに突進する生き物達、その群がり蠢くさまを見つめるおじさん・おばさんたちの、一種独特な目の光に対してはちょっとした違和感を感じたりもしていた。正しく冷静であるはずの大人達が静かに陶酔状態になってる図というのは、子供からするとけっこうリアルだしコワイのである。

 そんな自分も世間で言う「大人達」の仲間入りをして久しくなった。どちらかというと一般道から脱輪して、そのままわき道をトコトコと爆走(?)している感じのマイノリティ派の大人となったが、しかし今ふと我が身をかえりみれば、そういう所謂「おちこぼれ」の自分でも「ナントカおじさん・おばさん」としてのキャリアに関しては、しごく順調に運んでいる事が分かるのである。これは若干気味の悪い現象でもある。たとえば湖への散歩用のカバンを開けたら、入れた覚えはないのに「ズーメッド・ナチュラルタートルフード」がビンごと入っている。工具箱をとりに物置きへ行ったら、買った覚えのない「ひまわりの種10キロいり~あなたの野鳥ライフを応援する~」がある。こんななので、最近は己の知らない自身の存在を徐々に認めていかざるを得なくなった。自分は知らないうちにそこら中に餌をばらまき、寄ってきた生き物をあの独特なまなざしでウットリと眺める種族の一員となりつつあるらしい。それを知ってしまった今、自律という概念そのものが空しい。なぜならば、どう屁理屈をこねたところで、実際あどけないニシキガメの仔亀が池から顔をだし、鼻からちっこい泡をぴこぴこさせながらこちらを伺っているのを見てしまえば、にわかに気もそぞろとなって懐から取り出したビンの蓋をおもむろに開け、その小さなペレットを指でひとつぶひとつぶつまんで放り投げる段となれば、思考はもはやバラ色のもやの彼方でララバイララバイしてしまうわけなのだから。

 上の写真は今日の午後地元の緑地を散策した時の光景。桟橋から水面を覗いたら、ランチ・ブレイク中のビジネスマンが落としていったらしい、押し麦のベーグルがクルクル回っていた。じっと目を凝らすと実はたくさんのニシキガメ達が水底から上がってきては食いつき、また別のが上がってきては食いつきしていたのである。うちのカメたちにパンをやるなんてと例の狂った思考が一瞬脳裏にチラついたが、気を取りなおしてみれば、ズーメッドのペレットとくらべてベーグルの方が何倍も食いつきが良いのはおもしろく感じた。この水ガメのペレットにはフィッシュ・ミールがたっぷり入っているので、ベジタリアン傾向の強いニシキガメの成体にとっては、小麦でできていて、やらかくて、さらに糖分と脂肪分もとれるベーグルの方が、ずっとおいしいに決まっている。ニシキガメ達の間でのこのベーグル人気は凄いらしく、周辺一帯では皆繁殖行動も中断してせっせとかじりついていた。人間界の原宿界隈におけるパンケーキ的位置付けなのかもしれない。

2014年5月3日土曜日

「うさぎとかめ」のかめは何ガメか


 イソップ物語の「うさぎとかめ」と言えば日本でもなじみのあるストーリーで、自分でも昔読んだ本の白兎とミドリガメみたいなのが競争している挿絵がパっと頭に思い浮かびますが、あの話の原題は本当は「The Tortoise and the Hare(リクガメとノウサギ)」なんだということを、先日、ボランティア先の動物園に来ていた親子の会話から知りました。ミドリガメだとばかり思っていた主役のカメは、実はリクガメだったんですね。それで、作者のイソップは確かヨーロッパ人だったと思い当たり、リクガメが身近なヨーロッパということでなんだルーマニアの話かと脊髄反射的に考えていました。以前、故あってルーマニアや旧ユーゴスラビア圏の人々とほぼ生活を共にしていた時に、彼らのする話の流れから「ルーマニアの田舎の方へ行くとリクガメがバスケットいっぱいにとれる」という、変な思い込みをしてしまったためかもしれません(実際にはそんなにホイホイと獲れるようなものではないということは、加藤英明さんの「世界ぐるっと爬虫類探しの旅」を読んで知った)。ともあれ、帰宅してからも「あのカメはいったい何ガメだったのか」と非常に気になりだし、調べてみたら、作者のイソップはギリシャ人だったことが分かりました。ということは、うさぎと競争したカメのモデルはチチュウカイリクガメの仲間で、具体的には、ギリシャリクガメのうちのどれかかか、ヘルマンか、マルギナータリクガメだった可能性が高そうです。

1703年のイギリスのイソップ物語の挿絵(Francis Barlow)。カメはヌマガメのように見える。
でも、このタイプのカメが長距離の「かけっこ」でウサギを負かすというのは
どう贔屓目にみても無理があると、子供の頃思っていた。

 さらに、英語版ウィキの「イソップ(以下アイソーポス)の生涯」におもしろいことが書かれていました。曰く、アイソーポスはギリシャ人だったが、実は生粋のギリシャ人ではなく、もとは奴隷だったらしい。しかし、話が面白いおじさんだったため解放され、晴れてギリシア市民に格上げされたという経歴の持ち主だったようです。奴隷だったということは、どこか別の場所で青少年時代を過ごしていて、そこで土着のリクガメに親しんだ可能性もある。

 読み進めていくとこのアイソーポスがもともと生まれ育った地域というのが、主に二説あり、「メセンブリア」か「フリギア」という地方のどちらかだと考えられているそうです。メセンブリアは、バルカン半島周辺の地域で現在のブルガリアにあたる。フリギアは、海峡をまたいで今のトルコの主に内陸地方で、このふたつはどちらも黒海沿岸の地域です(ルーマニア、当たらずとも遠からず!)。ゆえに、もしもアイソーポスが主に幼少年期の体験をもとに「うさぎとかめ」を作りあげていた場合、それらのカメは特にイベラギリシャリクガメか、またはヒガシヘルマンリクガメの可能性が高いということになります。

 アイソーポスは紀元前7世紀頃に生まれたと考えられているそうですから、今から2500年以上の昔、ブルガリアのある町はずれでポクポクと歩いていたリクガメを見てなんとなく親しみを感じていた子供が、のちに数々の寓話を生み出すことになったのかもしれません。寓話は、同じ文化圏の人なら誰でも知ってるような題材や生き物をもとにして作られるものなので、つまり当時のギリシャとか黒海沿岸の人々にとってリクガメは、多分今よりもっとずっとありふれた「原野の隣人」のような存在だったんだろうなと、想像します。

2014年5月2日金曜日

新種のワニガメ

 海岸に巨大な眼球が漂着ゾンビは出るわ(閲覧注意)、跳梁跋扈するビルマの駆除は事実上もう不可能、それなのに今度は川からナイルワニまで発見されちゃったよという実在するB級ホラー映画村・フロリダですが、心温まる様なニュースもありました。なんと新種のワニガメが発見されたそうです。といっても、もともと1種類だと考えられていたものが、外見や遺伝的に明確な差異があることからMacrochelys temminckii(もともとのワニガメ)にM. suwannensisと、M. apalachicolaeをプラスした、3種類にわけられたというもので、これらは種としては数万年単位の昔に分岐していることも明らかになりました。それと同時にこの大型の淡水棲ガメがいかに元から住まう水系に依存した生活を送っているかということも、再確認されました。で、さっそくですが、生息地の環境破壊によって3種とも生息数が急激に減少していることも分かってきたそうです。ニュースを読むまで知りませんでしたが、フロリダには現在は中国のマーケット向けに食用亀を捕獲したり、それらを養殖するファームがあり、一時期はワニガメも捕獲の対象になっていたことがあるのだとか。これらのカメも今回の発見を期に、より重要な保護対象となっていくことが予想されています。

2014年5月1日木曜日

Green Frog (Lithobates clamitans)/右下はAmerican Toad (Anaxyrus americanus)のオタマ

 始めチョロチョロ程度だった雨が猛烈な雷雨に変わり、2日間降り続いた。今日、ようやく雨が止んだので、夕方の7時頃にカエル・ウォッチもかねて近所の雑木林を歩く。気温は21℃、暖かいので生き物が沢山いることを期待した。

 雑木林を抜けると湖があり、そこで大量のトウブニシキガメ達が、かなり活発に動き回っているのを見た(望遠レンズを持っていかなかった事を後悔)。湖に流れ込む小川の各所が増水しているので上流の方から色々な「食べ物」が流されてきているのかもしれない。このあたりのカメ達は繁殖期をひかえているので、これから夏にかけてすごい食欲を発揮していく。上の写真の右下のオタマジャクシは、どこかのヴァーナル・プールから湖まで押し流されてきてしまったと思われる、アメリカヒキガエルのオタマジャクシ達。浅瀬付近に流れてきたゴミと一緒に、ざっと見ただけでも数百匹単位でいたが、外敵だらけのこの大きな湖で育ち切るのはかなり難しいだろう。こういう場合、少し掬ったりして「レスキュー」してやった方がいいんだろうか?それともこれも自然の流れであるから、放っておくべきなんだろうか。しかし、以前は珍しかった急激な雷雨(ゲリラ雷雨状態)になることが増えて、ヒトの居住域からくる水(雨どいや道路からの排水)が小さな用水路に集中し、キャパを越えた水路の水ががミニチュア・鉄砲水のように、カエルたちのいる水たまりを巻き込みながら流れていくのを何回か目撃しており、そういうのは100パーセント自然な出来事とはいいがたいと思う。明日、まだ生き残っているのがいたら、ちょっと掬って裏庭のタブに入れておこうかな。勝手に成長してそのうちどこかへ行くだろう。

2014年4月28日月曜日


 先週末はとても天気がよかったため、土日とも外に行っていました。詳細は見聞録のページ「スネークデン・ブランチ その2」にまとめましたが、今年の初・野生のカメを捕獲しました。思わぬ大物で、2014年(もうはじまって大分経つけど)幸先がいい気がします。写真はおそらくアメリカに住むアカガエルの仲間と思しきカエルのオタマジャクシ達。ひと掬いでこんなに沢山とれるくらい湧きにわいてるスポットでは、落ち葉のダシでまったりとなった水の中でウヨウヨと蠢き続けるその様子に、大量生産、大量消費の確かな説得力を感じました(笑)。

2014年4月25日金曜日

ハイテク企業とハイウェイの間に、野生の生き物達の拠り所があった。


 先日のブログ記事でもふれましたが、Frog Watch USAのボランティアをするため、講習を受けてきました。講習では自然の中に両生類が存在する事の大切さにはじまり、3時間みっちりと色んなカエルのスライドを見ながら、種々の外見、州内の生息域、それぞれの種の持つ2種類の鳴き声を学習していきました。最後の筆記テストで80%以上を得点すれば公式のボランティアとして認定されます。メモをとりながら集中してがんばったかいあり、カエルの鳴き声の正答率は100%をマークすることができました。これで、「なんちゃってカエルはかせ」としての第一歩を踏みだした事になるのかな(笑)。今日は実際のカエル・ウォッチに先駆け、夕方散歩がてら自宅まわりの水場をいくつかチェックしてきました。

 上の写真は今日見つけた地元の緑地です。オフィス街とハイウェイにはさまれたこの場所は、40年ほど前までは農耕用の溜池だったそう。以降街の開発にともない、環境を重視した街づくりの専門家が呼ばれ、溜池の周囲3エーカーほどが浅く掘り拡げられた所へ、今では土着の植物や睡蓮が繁茂し「ミニチュア湿地帯」的様相を呈しています。夏は水が殆どなくなるそうなので大型の魚が育たず、両生類にとっては格好の繁殖場でしょう。余談ですが、管理人の住むこの郊外の街は、グーグルやオラクルなどのIT関連会社、CIAなどの国防系の機関や欧州車会社などのオフィスビル街が、こうして計画的に残された緑地の間ににょきにょきと混立しているアメリカでは非常に珍しいタイプの街です。いずれにせよ、自然を愛する先人たちが行った街づくりの工夫が、鳥類だけでも23種が営巣し、122種が生活の場として利用する拠り所となって息づいている事を思うと、けっこう感慨深いものがあります。水面の睡蓮が時折揺れるのでその間に目を凝らすと繁殖期に入ったらしい無数のニシキガメ達が2~3匹一組になって追いかけあっていました。普段車で通りすぎていた場所にこんないい所があったんだなあと、感激した午後でした。

2014年4月17日木曜日


 デジタルの描画道具をマイナーチェンジしました。今、色々実験しています。最近のソフトは驚くほど使いやすくなっていて、こうやって(↓下のイラスト)眼科の待合室で診察の順番を待ちながら、ササッと友達へ何か書いて送る・・・というようなこともできて感激します。描いてる感触自体はまだまだ所謂「紙とペン」にはぜんぜん及ばないけれど、この手軽さは捨てがたいものがありますね。あらゆる色を気兼ねなく使えるところもいいです。本物の絵の具はなんだかんだ言って高価だし、扱いにもコツが要ったり、放っておくとすぐ乾くので気軽にちょこちょこなんか描いて着彩したい人間には若干不便です。

 自分にとって絵を描いたり・ノートのはし切れにちょろちょろっとスケッチをしたりということは、楽しい趣味というよりかは、癖のようなものです。ちゃんと絵の教育を受けた事はありませんが、高校とか大学生の頃は、これが高じて雑誌や医療系のリーフレット等にカットを提供して、小銭をもらったりしていました。爬虫類関係だと「HERP LIFE」さんの#1だったかな・・・、#2だったかな・・・、で自分の描かせてもらったカットを見る事ができます。確かカメかなにかの飼育相談のコーナーでした(もう、大分前なのですっかり記憶があやふや)。雑誌という媒体を意識してちょっとまんがチックな仕様になっていますが、見つけたら「こんなところにいたぞ」と笑ってやってください。因みに、カット描きのバイト?は今でもたまにやっています。フリーランスなので、手数料などはかかりませんから、テキストばかりの発行物(ウェブも)に変化をつけたいなどの理由でカットやイラストが入用な方は、納期の最短一週間前までにお気軽にご相談ください。

 左は今月、買ったり、もらったり、拾ったりと、ひょんな縁でうちへ来た「B品達」。昔からちょっとどこかが欠けたような生き物に引きが強いと感じているので、もしも出会ったら大事にすることにしています。

 例ののびのびのメセン、シワシワのハオルシア、地中海産ヤモリ、そして右下にちろっと見えているのは「謎の爬虫類X」です。ヤモリはおそらく、東海岸に帰化しているトルコナキヤモリでしょう。拾った時点で右脚の一部が壊死して黒くなっており、無事に育つかは分からないので、今後の生命力に期待しています。謎の爬虫類Xは、たまたま接点のできた隣州のレスキューグループにいる個体で、(実際にうちで世話をするかどうかも含め)現在いろいろと調整中なので、詳細がはっきりし次第ここでもお知らせしていければ、と思っています。