2014年11月30日日曜日

トレッキングに潜む危険性

昨日は ブログむらのアイコンを沢山押してくださった方がいらっしゃたようです。
 どうもありがとうございます。

 昨日はけっこう歩き回ったのに、セアカサラマンダーの子供が1匹見つかったきり。今、非常に寒いので(サラマンダーとはいえ)心配だなあ、と思いつつ、隠れ場所に戻してきた。というのもここのところ管理人の住む東海岸に、北極から季節外れの寒気団が降りて来ていたんですね。それで先週などは気温がマイナス10℃くらいまで下がる日々でした。ちゃんとした冬用のフィールド道具を持ってない管理人なので、この調子で行くと秋から続いていたガサガサ活動がナシ崩し的に終了となりそうです。

 ところで、「野生の両生類を見て歩く」という遊びはそのうちいつの間にかただのトレッキングになってゆく(#金のサラマンダー)と以前書いた事がありますが、今年はそれを比較的まめにやってみて、ほとんど常に単独でフィールドに行っていたせいかも分かりませんが、これは結構危険も多い趣味だなという事に気が付いたのでした。今日は、今期のガサガサ活動のまとめとして、これまでに危なかったと思ったポイントを整理しました。とりたてて真新しいアイデアはありませんが、日本でも共通するものもあるかと思うので、来年の春に向けて自分と、他のフィールダー諸氏の注意喚起の足しにもなったらと思います。


 危ないポイントその1 ケガ。それも大ケガの危険性。前から思っていたんだけど、アメリカやヨーロッパの自然公園などへ行くと、十数歩先は断崖絶壁というような環境でもなぜか柵が取り付けられていない事があるんですね。そういう場所には「落ちると死ぬからね。毎年何人も死んでいるからね。」という看板がさりげなく掲示されている事が多いのですが、なにせさり気ないので、うっかり見落とす事がありえます。またイモリやサラマンダーはあまり人が立ち入らないような場所にこそいたりするので、好奇心が勝ってどんどんフィールドの奥の方に入っていってしまい、そこで足を挫いて帰れなくなる等の間抜けな展開も有り得るでしょう。フィールドでは自制心を忘れず、リスクを避けて、歩くときは10歩先も確認しながら遊びたいです。それにしても崖や急勾配の場所などにかぎってやたらと下を覗き込みたくなるのって何なんでしょうね。臼井義人現象と勝手に名付けてるんですが、自分の好奇心の強さは自分が一番把握していると思うので、十分に気を付けたいと思います。

 危ないポイントその2 野生のいきもの。上の写真はまさに昨日撮ったやつなんですが、私の住むエリアでは、このようなかんじでいきなり野生の動物がピョンと飛び出してくることがあります。管理人は鹿のボディランゲージには詳しくないので、このオスジカこの後、どういう行動に出るのかなど見当も付きません(とりあえず両手をわたわたと動かしながら目を見開いて威嚇?しておいた。←サルやイヌ科には多分逆効果なので注意)。猛禽やキツネくらいなら大歓迎ですが、もっと山深い方へ行けばクロクマ、マウンテンライオンにボブキャット、コヨーテなども出るらしいので、事前のリサーチと、相応の準備が大事だなと思いました。それから忘れてはならないのが、大動物だけではなく、微小なダニ類や蚊なども脅威になりえるという点。今年は日本でもデング熱が流行して騒ぎになりましたが、気候が暖かくなるにつれて熱帯産の病気が北の方に上がってくる事がこれからも増えていきそうな気がします。これらと同時に気を付けたいものにマダニが媒介する感染症もあります。北米にはライム熱という不治の感染症を引き起こすダニ(体長0.5㍉~)がおり、注意が呼びかけられていますが、近年日本でも土着のマダニの媒介する感染症(重症熱性血小板減少症候群-国立感染症研究所のサイトより)で死者が出ている事もあり、今後も防虫対策はしっかりやっていった方がよさそうです。

 あぶないポイントその3 「人」。個人的に、外国のフィールドでも一番危険なもののひとつは、他人ではないかと思います。日本人同士の間だと、「山や自然の中では皆仲間」のような感じで、互いに助け合ったりする素晴らしい空気感があるので、分かりにくい感覚ですが、外国では基本的に相手がどんな人間なのか、何が目的で接近してきているのかハッキリするまで、十分に注意した方がいいと考えます。リスクを減らすためにも、理想的にはフィールドでは常に複数名のグループでいられればよいのですが、実際は友人ともなかなか時間が合わせづらかったり、たまたま通りかかって一人で探索することにする事などが案外多いのが現実なので、このへんのバランスが難しいと感じます。

 並べてみたら案外少なかったですが、こんなところでしょうか。個人的に「内省しすぎる可能性」というのも入れたかったんですが、そんな奴自分だけだと思ったので、次点としました。というのも、管理人の場合、静寂に包まれた雑木林の中、倒木をつっついてワラジムシを眺めたりしていると、突然!世の友人たちは二人目が幼稚園に上がったり、30年ローンで家を買ったり、社長になったり、離婚して再婚したり、いろいろアクティブにやってるなかで、朽木をほじくって喜んでいる自分はいったい何をやっているのか???と、雷に打たれたような衝撃が走ることがあるんですね(笑)。でもときどき、ハイキングに行ったきり蒸発する人って時々いらっしゃることを考えると、山で来るこの内省のビッグウェーブも一枚噛んでたりして?とか、勝手に憶測しているんですよ。いやだなーこわいなー。今日のところはとりあえず、これらを教訓としながら(へたに内省しすぎず)、来年もフィールドを「安全に・さらに楽しく」をモットーに工夫を盛り込みつつ活動していきたいと思います。

2014年11月20日木曜日

「女の子のための飼い方ブック」


 「猫と一緒に暮らす女の子のための飼い方ブック」という新しい本がアマゾンで売られていた。オビを見ると「一人暮らしでも 旅行に行っても 仕事をしていても 結婚・出産しても 大丈夫! あなたの毎日をHappyにしてくれる猫を飼おう!」と書いてある。そこで世の不公平に敏感な管理人は、爬虫類バージョンのカバーを作成した(↗)。被写体は、自分の身近にいるなかで最もコネコに似ている爬虫類だと思った、動物園のカパーヘッドをチョイス。さあ、表紙はできたので、あとはどなたか内容のほうをお願いします(笑)。また、女性向けだけだとフェアじゃないので、「爬虫類と一緒に暮らす女の子の飼い方ブック」という、男性向けの続編もできればよろしくお願いします。

 冗談はさておき、生き物を飼うという事を「女性のための」という目線で見るのは、もしかしたらけっこう画期的なのかもしれない。「仕事」に「旅行」に「結婚・出産」にと、並べれば確かにかなり忙しそうだし、そんな忙しい時間割の中にメンテナンスの時間を捻じ込んでいき、さらに能率的に癒されようと思ったら、こうした指南書も時には必要なのかもしれない。ただ個人的に、そんなに忙しいならば哺乳類は諦めて、なんかの幼虫でも育てたらどうだろうかと思う。例えばモンシロチョウとかアゲハのアオムシはネコや爬虫類と違って子供をひっかいたり、かみついたりする可能性もないし、場所も取らないし、医療費も、光熱費も、水道代も食費もかからない(食草をむしってくるだけ)。そのうえ、最後チョウチョになって飛び立つ時にはどえらい感動がある。家で沢山飼えば、葉っぱをかじるサワサワという音に癒される。冬は一切世話をしなくていいから、それまで一年間後回しになってきた自分の事をできる。昆虫は、一部を除いてアレルゲンも殆どなく、人畜感染症の危険もないので、乳幼児がいても安心だ。それに、多分工夫次第で「オシャレに飼う」ことも出来る。そしてそして、最終的に自宅のまわりに昆虫の数が増えることは、多分周辺環境にとってもいいし、エコだ。そんな事から管理人はつねづね、時代は哺乳類よりも、爬虫類よりも、むしろアオムシを求めている!と感じているのだが、これは多分、「猫と一緒に暮らす女の子」の方々からも、「爬虫類と一緒に暮らす女の子」の方々からも、相手にされない発想だという事は分かっている。


2014年11月16日日曜日

最後の一枚


 写真に対して「その場の情景がだいたい伝わればOK」という、恥ずかしいくらい低いハードルを設定している管理人は、携帯カメラを愛用しています。ただやはり細かいところまでちゃんと撮りたいなと思う時、コンデジ以上の能力があるカメラがあると便利ですよね。それで以前は野歩き、山歩きの際に三脚と一眼をブラブラさせながら行っていたこともあったのですが、最終的にここ3年ほどは、軽くて持ち運びやすいソニーのデジイチに落ち着いていました。上の写真は3年間、たまに土まみれや釣り餌まみれになったりしながら頑張ってくれた、そのカメラで撮った最後の一枚。これを撮った直後また野歩きに出かけたのですが、バックパックの中がどうにも騒がしいと思って開けてみれば、消毒用ゲルのボトルによる自爆テロが行われた直後でした。ポケット一枚挟んで物陰に隠れていたこのデジイチ君は地図やメモパッドなどの仲間達と共に全身にゲルを浴び、儚くフィールドに散っていったのであります。

 それにしても今年の、管理人の電化製品運の無さたるや。このデジカメもそうだし、アイパッドも2枚割ったし、でっかいパワーサンも1個、ちょっと笑えるくらい木端微塵になったし(しかもより高価なソケットからショートさせた)。奮発して買ったエスプレッソマシーンもめげたし、パソコンも総取り替えになり、買ったばかりで喜んでいたアイフォンも翌日速攻で石の床に落として、見事に欠けました。なんだか今書いていて「今年はお金がないナァ」と漠然と思っていた訳が分かりました。そうそう、そして極め付けは今朝、愛車にキーを差し込んだら、寒さでバッテリーが中途半端に上がってたらしく、車内に入ってきたアイドリングのガスで死にかけ&涙ちょちょ切れたという。無暗に走ってエンジンを痛めたくないので、さっきレッカー車を呼んだ所です ←今ココ

 不幸自慢はこの辺にしますが、こうして並べてみるとやはり大殺界なのかという気がいたしますね。母親がアメリカまでわざわざ電話して教えてくれたんで間違いないのですが、管理人は「火星人」というやつで、今年の運勢は実に最悪なのだそうです。因みに美輪明宏や、美川憲一、ピーター 、マツコ・デラックスや ミッツ・マングローブ も火星人なんだとか。オカマのご加護がありそうな星回りなんですねえ。何だか納得してしまいました。では、お迎え(レッカー車)が来たようなので今日はこのあたりで。

2014年11月12日水曜日

かわ・ハラー「かわいい」と言う問題

人間の考える動物界における「かわいい概念」の代表例 - 砂のお風呂に入る、宅のハムスター


 ヒトが生き物を「かわいい」と言う時、それは同時に「かわいくない」生き物の存在を暗示する。例えば一般社会でいえば、上の写真の様なハムスターは「かわいい」とされる。小さくて、白っぽくやわらかい毛並みがふかふかで、足が短く黒目がくりくりしていて、木の実や葉っぱを食べ、人間と仲良しだからだ。一方、「かわいくない」生き物の典型的なものは、だいたい今挙げた形容詞の逆を考えると分かりやすい。即ち、大きかったり、黒っぽくて、節くれだった足をゴソゴソとさせ、瞳はギラギラと闇夜に輝き、固い毛並みかもしくは無毛で、食事は血や肉を貪り、人になつかない。生き物を「かわいい」と言う時、私達は無意識のうちに自分達にとっての良し悪しの判断を下しているのである。自然物である生物に対して「いい」と「わるい」を、自分の尺度で勝手に裁いているという事になる。

 我々の大好きな両生類や爬虫類の場合、どことなく親近感を感じさせるカメやカラフルなカエル、半分家畜化された一部のヘビ、トカゲ、ヤモリなどの場合はまだマシだと言えるけれども、それでも一般的には「かわいくない」に分類される生き物達だ。「かわいい」という言葉は本来、言い手の存在を脅かす可能性が低そうで立場的にも劣勢のものに対して使われ易い言葉なので、「ひょっとすると脅威になる得るかも」と想像をかきたてる両爬の場合、根本的に不利だ。もちろん「かわいい」のセンスは千差万別なので彼らにも愛好家が沢山いるが、中には逆を行って、この両生類や爬虫類が世間で「かわいくない」とされている前提を踏まえ、だからこそ好きなのではないかと思わされる人も存在する。「かわいくない」「こわい」とされている生き物を愛でている自分、という構図を作ることが目的の人も居るかも知れない。そんな時、両・爬は自意識補完薬としても作用するのだ。

 話をもとにもどすと、このように「かわいい」というアイデアはかなり主観的かつ、自動的に「かわいくない」側への差別を促すという倫理上の欠点がある。これには実害もあって、最近読んだこの話によると、たとえば自然環境や、生物種の保護活動においても、人々の関心や寄付は「かわいい」「きれいな」動物・・・例えばトラやクジラ、パンダやウミガメ、ホッキョクグマなどに集中し、それらの動物の存在を根底からささえる「縁の下の力持ち」の、小さな植物の仲間や昆虫類、クモ類、ヘビやカエルなどは無視される傾向にあるという。この現象は、人間の美的感覚が巡り巡って生物の多様性を失わせる可能性があることを示唆していて、危惧されることなのだ。

 まとめると、何かの生き物を見て「かわいい」という事は、スーパー上から目線なだけでなく、自然の神秘漲る「環境」に対して我々ヒトの粗末な尺度を押し付け、あわよくばその良し悪しを判定してやろうと考える傲慢、さらに「悪し」の側に分類されようものならいつの間にか滅びてようが知ったこっちゃねーという、あんまりな人類の暗黒面の発露となりかねないのである(※あくまで管理人個人の考えです)。よって今日、生き物に対して安易に「かわいい」という事は、ハラスメントの一種であると勝手に決定した所存であります。生き物をやたらと可愛さメインで語っていくことがあたかもめちゃめちゃ恥ずかしいことみたいな社会通念を作りませんか。本能を抑え込む最もパワフルな原動力は「恥ずかしいと思うきもち」だと思うので。

 しかしなんで、ここまでガタガタと能書きを書いたあげく両爬虫類の大大大の味方である管理人がロボロフスキーハムスターを3匹も飼っているのか、それはもう、理屈抜きでかわいいから生き物として大変興味深いからです。

一般論的「かわいくない」の一例、バルカンヘビガタトカゲ(Ophisaurus apodus)

お願いだからそんな目でこっちを見なさんな。

2014年11月10日月曜日

不定期更新「盗まれた世界」3

ノマド生活者


 1965年、ヘンリーA.モルトはクラフト食品※1で販売員の仕事に就いていた。この仕事はモルトに会社のワゴン車と、フィラデルフィア市の準郊外を自由に巡回出来る環境を与えていた。週末、動物園を訪れるために、モルトはこのワゴン車を勝手に乗りまわした。6歳頃から始まった彼の爬虫類採集癖-学校帰りに美しいキングスネーク達を入れた布製サックを背負って歩いていた-は、成長と共により多くの種、より危険な種への探求へと移行していた。当時25歳のモルトは実家の地下室で多くのコブラ、ガラガラヘビ、ドクトカゲ、そしてビルマニシキヘビ達を養っていた。

 クラフト食品は若くてエキセントリックなこの販売員を歓迎していた。雇われてからほんの一ヶ月たらずで、モルトの描いたコブラのイラスト-直立し、フードを広げた-はクラフト食品の社内誌The Kraftsmanの表紙を飾った。ページをめくると、サーモンローフのチェダ-ソースがけのレシピの隣に、モルトに関する記事が掲載された。クラフト食品の特派員が派遣され、モルトと彼の「普通じゃない趣味」について報道したのである。記事の中でモルトは嬉々として、彼の趣味が必ずしも法に則ったものでは無い可能性をほのめかした


 次にモルト君は、コレクションの中で彼がおそらく最も価値があるだろうと考えている個体・・・オールトラリアから連れてこられた美しいダイアモンド・パイソンを紹介しました。彼はこのヘビの為に90ドル(※2を支払ったそうです。モルト君によると、このダイアモンドパイソンはオーストラリアとパプアニューギニアの一部にしか生息せず、実際のところ急速に絶滅しつつあるのだということです。そのためオーストラリア政府はこれらのヘビの輸出を禁止しているのです。

 「ではどうやってあなたはこのヘビを連れ出したのですか?」

と聞くと、モルト君は黙って、しかし私にむかって策謀めいた一瞥をよこしたのであります。


 この時期、マヨネーズの瓶をカウントしカビの生えたチーズのクレジットを返金をする一日が終わるとモルトは、両親の家の彼のベッドルームに引きこもり、当時動物園や映画スタジオの間で出回っていた動物商名簿をもとに海外のディーラーに手紙を書いたのだ。モルトは、動物園ですら持っていないような珍しい生き物のみを欲していたので、当時野生動物の輸出に制限があったり、アメリカ合衆国との取引を禁止された国々-オーストラリア、アルゼンチン、共産国の数々-のディーラーに接触した。「人がやらないような方法もやってみた」、のちにモルトは言った。「例えば私がナショナル・ジオグラフィックで、宣教師がヘビを手に持っている写真を見たとする。そこで、彼にも手紙を書いてみる。こうした手紙の殆どは、届目的地に着く前に失われた」





(つづく)
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著者Jennie Erin Smithは科学と自然史に精通し多くの受賞歴を持つフリーランスのサイエンス・リポーターであり、頻繁にTimes Literally Supplementに掲載されている。彼女はフロリダで数年間環境リポーターを務めたことがあり、そこで著作Stolen World (2011)を書くのに必要な多くのコンタクトを得た。

※1 乳製品で有名な大会社。
※2 2014年現在の貨幣価値だと672ドル相当。

2014年11月5日水曜日

ひとりぼっちのオタマジャクシ


 上の写真は近隣を勝手にパトロールしていた時に見つけた、紅葉真っ盛りのカエデ。本当にこんなオモチャのプラスチックみたいな色をしているんですよ。周囲を賑わわせていた森の小動物達は、もうそれぞれ巣穴へ入って眠りについている頃。きれいな風景は一年間の「自然劇場」の最後のお楽しみ、冬という新たな準備期間へ入る前の、華やかで、楽しいエンドロールのような感じなのかも知れない。葉っぱはそれぞれ思い思いの色に変わると、苦痛もなく潔くぱらりんと枝から取れて、つかの間のフライトを楽しんだと思ったら、もういつのまにか土へ還ろうとしている。よくできているなと思う。人生も、終わりは出来ればこんな感じであってほしいものだ(笑)。

 奥に写っているのはひと夏の間、さまざまな話題を提供してくれた湖(池の様に見えるが、写真左手の方へ細長く続いている)。思いかえせば今年もここで色々な生き物との出会いがあった。この湖の周囲は季節的に小さな水たまりができるため、カエル・ウォッチの時は立ち寄るポイントになっていたし、嵐の後にここで拾ったオタマジャクシが、その後元気に巣立っていったこともあった。釣ったバスをリリース時に放ったら、水面で失神状態になった魚を潜水艦の様に浮上してきた大きなカミツキガメが、頭からバリバリ食べてしまったこともあった。トウブニシキガメの「マック」や、釣られて迷惑そうにしていたミシシッピニオイガメ達も、きっと今ごろこの湖のどこかで寝ているに違いない(「マック」はちゃんとカメらしい格好で寝てるのか不安が残るが・・・)。

オタマ隠してしり隠さず

 こんな時期なのに、湖の淵のあたりで一匹だけ居たオタマジャクシを見つけた。とても用心深くてこちらが少しでも動くとピャッと逃げてしまう。最終的に、水底のふわふわとした泥に半分めり込んで、安心したらしい所を写真に撮ったが、いったい何の種類のカエルなのか見当も付かない(大きさや模様からウシガエルでないと思う)。こんな晩秋にオタマの形態ということは、このまま冬を越すのだろうか。

 近年北米でも北の方では、日本のアカガエルの仲間のウッドフロッグや、ほかにもアマガエルの仲間のグレイツリーフロッグ、スプリングピーパー、コーラスフロッグなどは、仮に冬眠中全身が凍結しても条件が揃えば春に元気に蘇生してくる(!)事が分かってきている。このオタマがいったいどういう作戦を立てているのかは知らないが、無事に冬を越せるといいなと思う。

2014年11月3日月曜日

朗報・・・?アミメの単為生殖

単為生殖するなら・・・飼ってあげてもよろしくてよ

 アミメニシキヘビが単為生殖することが、世界で初めて確認されたとか。日本語版のナショジオにも詳しいストーリーが載っているので、詳細はそちらを参考にしてほしいが、大まかな内容をまとめると、アメリカの動物園で生れてから11年間オスとの一切の接触もなく暮らしてきたアミメニシキヘビのメスが突然61個の卵を産み、なんとそのうち6個からメスの仔が孵ったという。仔の遺伝情報を調べたところ、メス親と同じことだったことから単為生殖したことが確定されたというもの。これは全アミメ飼育者にとっては朗報・・・なのだろうか?今回殖えたメス親は全長7メートル弱、体重100キロちかくある個体だという。荒ぶる丸太ん棒のようなアミメ達が、さらに自力で増えられるというのは、個人的にはどちらかというとホラーに近い話である。

 注目したいのは、記事内でも言及されているように、以前から進化的新奇性と見なされていた両生類・爬虫類の単為生殖が従来考えてこられたよりもかなり一般的であるというのが、だんだん解き明かされてきているという点。コモドオオトカゲが単為生殖出来ると確かめられた時の驚きは、まだまだ記憶に新しいし、日本ではオガサワラヤモリやメクラヘビの一部なども単為生殖することで知られ、ほかにも国内でミズオオトカゲが単為生殖したとされる例ある。種によっては、単為生殖で生まれた子が親と全く同じ遺伝子セットを2つ備えることになるため、親に色彩モルフがあった場合スーパー体になるなどの不思議な事が起こるのも、日ごろから世話をしていた者にとっては嬉しいサプライズとなるのではないだろうか。

 にしてもアミメでこの調子ということは、ボールも単為生殖したりしないかな。今日の写真は、前から密かにかわいい思ってたブリーダーさんの、エンペラーピンのメスなんですが・・・。買ってきて、じーっと眺めていればそのうち増えてくれたりするのでしょうか。そしたら生れた仔を売って、ボール御殿を建てようぞ。って、動機が不純すぎるか。

2014年11月1日土曜日

イモリツボカビの新たな脅威

とある日のイモリ・ラボにて 管理人に気づいて手をふっている?ブチイモリ

有尾類キーパーの方にぜひ知ってほしい話を読んだ(日本語のニュース記事はこちら。より詳しい説明は国立環境研究所のこのページでも見られる)。アジア産有尾類の保有するツボカビの一種が現在、欧州産のイモリ・サンショウウオの間で猛威を振るっており、今後さらに北米にまで達する可能性が非常に高いという話だ。この菌はイモリツボカビ-Batrachochytrium salamandrivorans(Bs)といい、ベルギーの研究所での実験によると新旧大陸の多くの有尾類に対して感染力、致死率ともに非常に高く、特に欧州から地中海沿岸域に生息する種の多くや、管理人の住む北アメリカで代表的な種であるブチイモリなどがこの菌に感染した場合、致死率はほぼ100パーセントに達するという。

 専門家によると、このアウトブレイクの重要な要因に両生類のペットトレードが挙げられるという。イボイモリやシナイモリをはじめ、アジアの有尾類の中にはペットとして人気があり頻繁にペットルートにのる種があるが、これらの種の中にはBs菌に対して対抗性、耐性があったり、感受性を持つものが広く見られるいう(日本のアカハライモリもこの菌に対して感受性が確認された)。現在欧州で猛威を振るっているBs菌の発生源は、こうして人為的に持ち込まれた生き物達だという。管理人はちょうど先日オランダのファイアサラマンダー棲息数があっちゅう間に減少して今や絶滅の危機、という話を読んで心を痛めていたのだが、陰の立役者としてこのツボカビ菌がからんでいた部分も大いにあったのだろう。

 この事態、日本でアジア産の両生類を飼育している分にはほとんど影響がないとも思える事かもしれない。けれども、こうした「未知の外来病原菌」が今後も出てくる可能性もある。今回アジアの有尾類がBsに耐性を示したように、例えば外産種達はへっちゃらでも、日本のイモリ・サラマンダー達にとっては重症化する菌などが、これから絶対に出てこないとは言い切れない。またカエルツボカビ症におけるアメリカザリガニのように、一見全く無関係な種が要員となって、在来種たちに間接的に予期せぬダメージを与えるということも考えられる。有尾類に限らず外国産の生物をペットとして飼う場合、衛生管理のきちんとした専門店からCB個体を購入し、個体同士は触れさせない、飼育水はできれば消毒してから下水に流す(外に捨てない)、死んだ個体は焼却する、フィールドで使った靴や器具はきれいに洗ってそのつど殺菌する、等の「基本」を今一度思い出しながら挑みたい。また、飼育している複数のイモリ・サラマンダーが次々と死ぬなど不審な事が起きた場合は、最寄りの獣医大学の病理学研究所に連絡をとる事を勧める。一例としてカエルツボカビ症の時、我々愛好家にも相談窓口を提供してくださっていた麻布大学病理学研究所のリンクを貼っておく。

 今日はあまり時間なく急いで書いたためちょっとゴチャゴチャした文章になってしまったかもしれないけれど、愛好家間で共有する必要のある事かと思ったので、どうしてもメモしておきたかった。それもこれも先週、研究者の間でも現在入手が非常に困難だという「旧世界のイモリ・サンショウウオ」という新しい本をたまたま貸りられる機会があり、そこで欧州産有尾類の多くが、その生息状況が本当の本当に風前の灯状態だということを具体的に見せつけられ、ガーンときた事も大きいかもしれない。