2014年4月29日火曜日

 国内で、ペットとして飼われる爬虫類の総数が280万とも、300万頭といわれるここ北アメリカですが、そんな中で定期的に話題になるのがサルモネラ菌感染症についてです。特定の動物種などから特定の感染症に罹患する人口が、例年に比べ有意に高まると「アウトブレイク」という疫学用語が使われますが、こちらで一昨日発表された報道によると、今年確認されたペット爬虫類から飼育者へのサルモネラ菌感染症アウトブレイクの引き金となったのは、フトアゴヒゲトカゲだったそうです。いきもの好きの皆にとっては周知の事かと思いますが、爬虫類にとってのサルモネラ菌とは殆ど常在細菌のようなもので、野生の爬虫類達もしばしば保菌しているし、一説によれば日本国内のペットショップで売れられる爬虫類のおよそ50%が、また欧米でもペット爬虫類の20~40%が保菌していると考えられています。

 近年こちらで問題となっているのは、大手ペットチェーンによって安価に供給されるペット爬虫類の存在により、基礎知識のない人々でも安易に爬虫類飼育を始められてしまうような状況が出来てしまっていることです。また上記のフトアゴヒゲトカゲのほかにもイグアナやリクガメなどのように、見た目にも表情がハッキリしていて感情移入されやすいタイプの爬虫類の場合、飼い主の側も知らず知らずのうちに節度を越えた触れ合い方をしてしまう傾向があると思います。そのような場に居合わせた乳幼児や抵抗力の落ちたお年寄りなどが、サルモネラ菌感染症の犠牲者となるパターンが多いということは、先月のシンポジウムに来ていた疾病管理予防センター(CDC)の方も話していました。ペット爬虫類由来のサルモネラ菌感染症は比較的重症になりやすいとされることと、抗生物質があまり効かないタイプの菌も存在するということで、こういうニュースを期にいきもの触ったら手を洗おう!を、改めて心がけたいところです。

2014年4月28日月曜日


 先週末はとても天気がよかったため、土日とも外に行っていました。詳細は見聞録のページ「スネークデン・ブランチ その2」にまとめましたが、今年の初・野生のカメを捕獲しました。思わぬ大物で、2014年(もうはじまって大分経つけど)幸先がいい気がします。写真はおそらくアメリカに住むアカガエルの仲間と思しきカエルのオタマジャクシ達。ひと掬いでこんなに沢山とれるくらい湧きにわいてるスポットでは、落ち葉のダシでまったりとなった水の中でウヨウヨと蠢き続けるその様子に、大量生産、大量消費の確かな説得力を感じました(笑)。

2014年4月26日土曜日

しぺどんスマイル

Nerodia sipedon sipedon 

 週末、自宅から車で15分の所にある保護林へ行ってきた。一周だいたい2時間半程度の手ごろな大きさの雑木林で、中でもところどころを走る小川では春のキタミズベヘビ祭りが開催されていた。歩き終わってカメラを見ながら確認すると、イヤリングサイズのが2匹にはじまり、ヤングアダルトサイズのが2匹、アダルトサイズが2匹と、コモンリボンスネークが1匹の、計7匹のヘビに遭遇していた。時間あたりの数を考慮すると今までのフィールディングの中では最高記録かもしれない。ほかにカエル2種に加え、シカとスカンクのサイン(動物がそこにいたことを示す痕跡・・・足跡、糞、食餌の跡など)も見た。こうしてみると自分が市街地の中の緑地帯にいることを忘れそうになる位、野生の生き物の気配の濃い場所だった。結果に満足しつつ帰宅すると、今度は自宅脇に幼稚園くらいの男の子達が群がっていた。さりげなく輪に参加してみると、裏に住んでるらしい野生のプレーンガータースネークが、大きなアメリカヒキガエルを、今まさに飲み込まんとしている所だった。今日はなんだかヤケにヘビだらけの一日だった・・・と、自宅のヘビ部屋からこれを書いていると、ただただ歩き回っただけで具体的には何もしてない今日なのに、やけに充実感が湧いてくるから不思議である(笑)。

 上の写真はキタミズベヘビ、イヤリングサイズのうちの一匹。やはりヘビもヒトと同じで、子供は恐れよりも好奇心が強いものなんだろうか。見つけた時はじっと水底にいたのに、カメラを向けたら自らすすんで水面まで出て来てポーズ?をとってくれた。なんとなく笑っているように見える。春が来て喜んでいるのかもしれない。

2014年4月25日金曜日

ハイテク企業とハイウェイの間に、野生の生き物達の拠り所があった。


 先日のブログ記事でもふれましたが、Frog Watch USAのボランティアをするため、講習を受けてきました。講習では自然の中に両生類が存在する事の大切さにはじまり、3時間みっちりと色んなカエルのスライドを見ながら、種々の外見、州内の生息域、それぞれの種の持つ2種類の鳴き声を学習していきました。最後の筆記テストで80%以上を得点すれば公式のボランティアとして認定されます。メモをとりながら集中してがんばったかいあり、カエルの鳴き声の正答率は100%をマークすることができました。これで、「なんちゃってカエルはかせ」としての第一歩を踏みだした事になるのかな(笑)。今日は実際のカエル・ウォッチに先駆け、夕方散歩がてら自宅まわりの水場をいくつかチェックしてきました。

 上の写真は今日見つけた地元の緑地です。オフィス街とハイウェイにはさまれたこの場所は、40年ほど前までは農耕用の溜池だったそう。以降街の開発にともない、環境を重視した街づくりの専門家が呼ばれ、溜池の周囲3エーカーほどが浅く掘り拡げられた所へ、今では土着の植物や睡蓮が繁茂し「ミニチュア湿地帯」的様相を呈しています。夏は水が殆どなくなるそうなので大型の魚が育たず、両生類にとっては格好の繁殖場でしょう。余談ですが、管理人の住むこの郊外の街は、グーグルやオラクルなどのIT関連会社、CIAなどの国防系の機関や欧州車会社などのオフィスビル街が、こうして計画的に残された緑地の間ににょきにょきと混立しているアメリカでは非常に珍しいタイプの街です。いずれにせよ、自然を愛する先人たちが行った街づくりの工夫が、鳥類だけでも23種が営巣し、122種が生活の場として利用する拠り所となって息づいている事を思うと、けっこう感慨深いものがあります。水面の睡蓮が時折揺れるのでその間に目を凝らすと繁殖期に入ったらしい無数のニシキガメ達が2~3匹一組になって追いかけあっていました。普段車で通りすぎていた場所にこんないい所があったんだなあと、感激した午後でした。

2014年4月24日木曜日

 トルコナキヤモリの仔が来てからというもの、管理人の一日に「夕方裏庭まで行って地面をほじくり、小さなワラジムシやトビムシ類を5匹拾って帰ってくる」という、まことにみみっちい行動が加わりました。右脚の黒くなった箇所に変化はありませんが、頭から体までが親指の第一関節におさまる程度なため、正直どのくらい元気なのか、ちゃんと食べてるのかどうかよく分かりません。ただ、写真を撮ろうとするとピャッと機敏に動くので、反応良く逃げるだけの体力はあるようです。この地中海産のヤモリは和菓子の「すあま」のような質感の肌をしていて内臓が透けて見えるんですが、その内臓の感じを見てると「何かを食べてはいる風」です。こんな時、故郷の東京ならばさくっと最寄りの爬虫類店へ行ってピンヘッドコオロギを購入し一件落着している所ですが、ここはアメリカ。まずはペット店で手に入る、Sサイズコオロギを食べられるところまでがんばる事を目標に定めました。

2014年4月23日水曜日

動物園で職員をイラッとさせる行動7選


 管理人が有志のスタッフをしている米国立動物園は、名前の通り国費で運営されており、市民は無料で動物達を観察したり、書庫やビデオルームで勉強したりすることができます。動物園だけでなく同じ学術協会系列の博物館や施設の多くも無料で入場できるので、個人的にはすごくいいシステムだと感じていますが、反面、世の「タダなもの」の常としてとにかくピンからキリまで本当にさまざまな人がビジターとしてやってくるため、特に「キリ」な人々纏わる逸話にも実にさまざまなものがあります。今日はアメリカの一般的な動物園に関して見聞きした風変りなビジター話を、管理人自身の実体験も交えつつまとめてみたいと思います。

 1.動物が見えないと怒りだす

 いるんですよ。これは先日管理人自身が遭遇したケースですが、聞くと「結構よくある」らしくダブルでびっくりしたもの。いうまでもありませんが、生き物が常に展示場所の開けた場所に居てポーズをとってくれているなどということは不可能ですから、それに対して飼育員や補助員に詰め寄らないで欲しいのです。

 2.動物と触れ合おうとする

 防護柵の上に立つ、防護柵から手を伸ばす、どこからか持ってきた棒を動物のほうへ差し出す、小石やちぎった雑草を動物に向かって投げる、手持ちのスナックをちらつかせる。または温室で放し飼いの生き物を捕まえようとするなど。子供に多い行動ですが、こういう子供の親に限ってなぜか全く注意しなかったりします。
 
 3.自分のペットを動物園につれてくる

 これは、エキゾチックアニマルの飼い主に多い。たとえば一般の来場者が小型のサルやオウムを肩にのせてきたり、大きなニシキヘビを体に巻いてきて、爬虫類館の脇で勝手に触れ合い体験コーナーを開設する(笑)。理由は種々ありますが、特にビジターにとっては動物園が行っているレクチャーの一種と捉えられ、誤解を招くためNGな行為です。

 4.尊大な振る舞い

 中年以降の人に多い、飼育員を「肉体労働者に毛が生えた」程度に思っている人。確かに動物園の飼育員はズボンの裾が常に濡れていたり、頭に牧草がついてたりして見た目は限りなく肉体労働者っぽいですが、ほぼ全員が博士号を持つ動物のための専門家です。そのため、「どこどこに忘れ物をしたから、取っておいてくれ」とか、「あのガゼルが見たいから、檻の前のほうに連れてきてくれ」という要望をするのは筋違いです。動物園において、ビジターと飼育員は対等な関係なんですね。

 5.動物の檻に入る

 2で挙げた「触れ合おうとする人」の進化バージョンといえます。もう、かなりイッちゃっていると思いますが2年に一度くらいは現れるキャラらしい。中には自殺志望の人もいるので、特に肉食獣や類人猿のケージのまわりでは関係者・警備員は気を抜けないと言います。

 6.臭がる

 校外学習などで来ている若者の団体に多い。動物園が匂うのは普通であり、入園者誰しもちょっと臭いと思うのは普通です。しかし園に入った瞬間「くせ~、くせ~」「ゲロゲロ」等、匂いに対して騒ぎ続ける人達や、始終鼻を袖口やハンカチで覆って移動している人もいるんですね。思ったことをすなおに表現する人が多いアメリカなので仕方がないですが、その「臭い」動物のために毎日一生懸命働いている人々からすれば「あなた自身はさぞやいい匂いなんだろうね?」と聞き返したくなるのも分かる様な気がします。

 7.過度に動物の注意を惹こうとする

 どこの動物園でも多分最もうっとおしがられていると思われる行為。檻の前で過度に口笛を吹く、チュッチュッと音をさせる、人間の食べ物を投げる、ケージのガラス窓をドンドンと叩くなど。一人ひとりがやるアピールはわずかなものでも、繁忙期となればこれを一日何千回、週に何万回とやられる動物の事を思うと居てもたってもいられなくなる職員は多いようです。

  日本でも共通するようなものから、アメリカでしか起こらないだろうと思われるような奇抜な事件まで、動物園では日々さまざまなドラマが起こっています。それらを見るにつけ、少なくとも人間の都合でそこに居てくれている動植物への敬意は、いつも忘れないようにしたいものだなあ思います。

2014年4月22日火曜日

食べ、飲み、排泄し、同じ作業をせっせと繰り返し、命をつなぐために生き、そしていつしか死んで行く。



2014年4月17日木曜日


 デジタルの描画道具をマイナーチェンジしました。今、色々実験しています。最近のソフトは驚くほど使いやすくなっていて、こうやって(↓下のイラスト)眼科の待合室で診察の順番を待ちながら、ササッと友達へ何か書いて送る・・・というようなこともできて感激します。描いてる感触自体はまだまだ所謂「紙とペン」にはぜんぜん及ばないけれど、この手軽さは捨てがたいものがありますね。あらゆる色を気兼ねなく使えるところもいいです。本物の絵の具はなんだかんだ言って高価だし、扱いにもコツが要ったり、放っておくとすぐ乾くので気軽にちょこちょこなんか描いて着彩したい人間には若干不便です。

 自分にとって絵を描いたり・ノートのはし切れにちょろちょろっとスケッチをしたりということは、楽しい趣味というよりかは、癖のようなものです。ちゃんと絵の教育を受けた事はありませんが、高校とか大学生の頃は、これが高じて雑誌や医療系のリーフレット等にカットを提供して、小銭をもらったりしていました。爬虫類関係だと「HERP LIFE」さんの#1だったかな・・・、#2だったかな・・・、で自分の描かせてもらったカットを見る事ができます。確かカメかなにかの飼育相談のコーナーでした(もう、大分前なのですっかり記憶があやふや)。雑誌という媒体を意識してちょっとまんがチックな仕様になっていますが、見つけたら「こんなところにいたぞ」と笑ってやってください。因みに、カット描きのバイト?は今でもたまにやっています。フリーランスなので、手数料などはかかりませんから、テキストばかりの発行物(ウェブも)に変化をつけたいなどの理由でカットやイラストが入用な方は、納期の最短一週間前までにお気軽にご相談ください。

 左は今月、買ったり、もらったり、拾ったりと、ひょんな縁でうちへ来た「B品達」。昔からちょっとどこかが欠けたような生き物に引きが強いと感じているので、もしも出会ったら大事にすることにしています。

 例ののびのびのメセン、シワシワのハオルシア、地中海産ヤモリ、そして右下にちろっと見えているのは「謎の爬虫類X」です。ヤモリはおそらく、東海岸に帰化しているトルコナキヤモリでしょう。拾った時点で右脚の一部が壊死して黒くなっており、無事に育つかは分からないので、今後の生命力に期待しています。謎の爬虫類Xは、たまたま接点のできた隣州のレスキューグループにいる個体で、(実際にうちで世話をするかどうかも含め)現在いろいろと調整中なので、詳細がはっきりし次第ここでもお知らせしていければ、と思っています。

2014年4月14日月曜日

雨ときどき、春


American Toad (Anaxyrus americanus)

 サンショウウオ・ウォッチングの途中、ひっくり返した石の下にアメリカヒキガエルがいました。日本のヒキガエルよりも小型で、片手におさまるオニギリ位の大きさのかわいいガマです。見た目はブツブツがあってごついですが、プルルルル・・・という澄んだ声の持ち主で、遠くで鳴くこのカエルの合唱をききながら夜ベッドに寝転ぶ時、なんともいえず癒されます。これと似たヒキガエルでフォーラーズヒキガエルというのもいますが、管理人には未だにあまり区別がつきません。今週末にFrog Watch USAという、地域のカエルの生息数カウントを手伝うためのトレーニングを受ける予定なので、そこで「なんちゃってカエルはかせ」になれば、今後少しはその辺りの区別も付くようになるかも・・・と期待しています。

 最近日本ではいきものログという環境省の主催するインターネットサービスがあるそうですね。今日の時点ですでに400万件以上の野生動物の目撃情報が寄せられているようです。このログはスマートフォンやパソコンがあれば誰でも参加でき、身の回りの生き物について「報告する」「検索する」「学習する」「交流する」という4つのアクティビティをもつことができます。フィールドから直接スマホを介して気軽に情報がシェアできるという点も画期的だと思います。

2014年4月13日日曜日

 ナショジオニュースで「フランスに続きベルギーで象牙を破壊」というのを見かけて、バカバカしさに呆れた。象牙に対して「善」か、「悪」かと断じるのは彼らの勝手だけど、「悪」と決めた場合にそれを粉砕して捨て去ってしまうのは、パフォーマンスとしてもなんか古臭い上、ランプのためにクジラを捕りつくし、グルメのために病気のガチョウや発育不良のウシを育て、奴隷を死ぬまで働かせたうえ、ある日突然聖人君主がおをしているいつかの西洋人の態度と重なるようで白けてしまう。もっと重要なのは、それじゃあ人間の経済的利潤のために殺されて、人間の政治的利潤(プロパガンダ)のために死んで残した牙までも焼きつくされる、肝心のゾウたちが犬死にだという点だ。法律の網目の間に挟まれて、死蔵状態の象牙のストックをどうしようがそれは国の判断だけれど、今まさに手元にある牙のために幾千幾万の象が命を落としたという事実はもはや変えようがないのだから、そこは”Keep Calm and Carry On”だ。例えばストックアップされた象牙を政府のコントロール下で少しずつ合法的に売って、そして得た資金をゾウを守るための啓蒙活動に使ったりする方がよほど有意義だと思える。

 爬虫類にも言える事だと思うけど、重要なのは「Xがほしい」という一部の人々の異常な欲望は尽きることがなく、そこで合法的に入手できないものは必ず違法に取引されるようになるという点だ。合法的に取引され得る象牙が減っていくということは、非合法に取引される象牙の量が増えるということとイコールだ。この汚れたニンゲンの世界で勧善懲悪を目指すことにはすごく意味があるけれど、その実現は難しいだろう。もともとの禁制品を合法的に取引できる窓口を作ることが闇取引を減らすことにつながるというのは大麻で実証済みでもある。もっとみんなが流動的に考えられる世の中になってほしい。

2014年4月10日木曜日

「家庭でできるカエル保護のてびき」


 家の裏庭で立派に生きてる両生類がいるとわかり「彼らが今後も元気で生きていけるよう、いい状態をキープせねば」と俄然やる気がわいてきています。我ながら単純ですが。

 ところが考えていくうち、庭や花壇や畑というのは特に春先にけっこういろんな化学物質まみれになる場所でもあると気が付きました。アメリカの一般家庭をみるとこの時期、薬をまいていわゆる「不快害虫」や雑草を一掃し、残したい植物はどんどん生育するよう肥料をまきますが、これらの多くに科学的に合成された成分が使われています。よく知られた事ですが、両生類は透過性の高い皮膚のお陰で体内にすぐ化学成分が浸透してしまうため、薬を使った庭の手入れはよく考えて行わないといけません。その点どちらかというと日本の家庭の方がエコロジカルな感じがしますね。か弱い草花などにも感情移入できる日本人は、野草が一生懸命花を咲かせ小さな蜂がせっせと働いているところへいきなりやって来て、全てに殺虫剤をぶち撒こうぜ!という思考にはなりにくいと思います。そして、植物と園芸が大好きだったうちの祖母が、毎日午前中は庭へ出て全ての手入れを人力でこまごまと行っていたのを思うと、忙しくて比較的大雑把なアメリカ人達が「芝生が青々と生えそろい雑草一本ない」ようなアメリカンとか、ブリティッシュ・スタイルの庭を目指すことはどこか無理があるように思います。

 そんな中近所のネイチャー・センターで「家庭でできるカエル保護の手引き」というしおりを見つけました(PDF版もあった)。見えないところで化学物質が使われやすい庭の手入れに際しての指南書のようです。カエルにフォーカスしていますがイモリにも共通するアドバイスだとおもったので、ほほうと感じたものを7つ抜粋してみます。

 ・庭から害虫や害獣をひきつけるようなものを取り去る。
 
 動物が食べられる実のなる植物や樹木はなるべく植えない。また使っていない植木鉢、刈ったあとの雑草や枝葉の山、道具類や木板などはいわゆる「害虫」の格好の住処になりますが、こういう物理的な隠れ家をどける事は、単純だが実は一番効果があるそうです(ご近所の造園専門家の方も言っていた)。特に雨水がたまるような場所があると一気に色々な生き物が立ち寄るようになってしまうので、ガーデニングのあとで空の容器や、水の入ったジョウロを置き忘れたりしないよう注意との事。これに付随して

 ・排水溝や雨どいの手入れを定期的に行う

 事も挙げられていました。

 ・地元産の樹木や花を積極的に植える

 もともとその地に育つ植物は気候風土にもマッチしているので、余分な殺虫剤や肥料を施さなくても、比較的元気に育つ事ができるんですね。たとえばバラは、異常に強くてうちの裏では雑草化し藪になっていますが、日本で育てるためには水をやりすぎないようにしたりとか、虫をとってやったりだとか、色々工夫がいります。普段見慣れた地元産の草木でも、よく見ると素晴らしいものが隠れていたりするし、植え方や剪定の仕方によって綺麗にみせることもできそうです。庭造りの腕が試されますね。また、

 ・(一年草の場合)毎年植える種類を変化させる
 
 ということも書かれていました。
 こうすることで、特定の植物に頼って生きている生き物が庭に居つくことを避けられる、と書かれていました。

 ・有機肥料を、正しい容量で使用する。施肥と共に水まきを行う。

 見落としがちだけど、こやしのやりすぎは非常によく見られる問題だとか。庭に過剰に施された肥料は雨水と共に下水へ行かず直接池や河川に入る場合があり、水の中の栄養素の割合を変えてしまうので避けるべきとのこと。また肥料は科学的に合成されたものは避け、有機のものを使うよう書かれていました。適切な量の肥料をまいたら同時に軽く水撒きもして成分を土壌にしっかりと吸収させ、流れ出す成分を最小限に抑える(上記の理由で、大雨の前日などは肥料をまくのには適さない)。

 ・ミニコンポストの設置。

 有機肥料を自家製でまかなうということですね。お店で売られている「有機」「オルガニック」商品が、実はさまざまな規格をクリアしているだけで本当にそうかどうか分からないというのは、日本もアメリカも同じです。コンポストというとこじゃれた風ですが、我ら生き物好きの観点からみれば家の一角にかわいいミミズ達を飼うということと、似たようなものです(→ミミズコンポストの作り方)。管理人のセカンドホームのひとつは西日本にありますが、シーボルトミミズという、大きくて七色に光る芸術的に美しいミミズがたまにいるんですよ。自然の濃い場所に出るので家庭で飼えるのかは分かりませんが、もしもあのシーボルトミミズが飼えてしかもゴミを減らしてくれるとしたら・・・・・・と、妄想タイムスタートしてしまう。プランター1個で始められるプランターコンポストというのも、ベランダさえあれば始められるので便利でしょう(→定年オヤジさんの生ゴミ堆肥化実験)。

 ・マルチをまく。

「マルチ」とは、あまり耳馴染みがないですが、小さく破砕した樹木チップ(またはそれに似せたゴム製パルプ)のことです。日本の農家さんが使っている「黒マルチ」というのは、厳密にはこのマルチの下に敷くガーデン・ファブリックの事です。

 このファブリックで雑草の生えそうな場所全体覆いプラスチックのくさびで留めて、その上に藁くずや、より鑑賞性の高いマルチを置くというのは、ここでは非常に一般的な除草メソッドです。ファブリックは水は通しますが、光は通さないのでその下から草は生えてこないんですね。管理人は、色んな野草が好き勝手に生えている状態も好きなのでちょっと寂しい気もしますが、科学薬品を一切使わずに済むので、しばらく何かを植える予定もないスペースがあるが雑草がぼうぼうで見苦しい、という状況であれば最適の方法だと思います。マルチには赤系、茶系、黒褐色系と大きくわけて3つくらいの色みがあり、そんなに手間をかけなくても一応きちんとして見えるので、アメリカ人が好むアイテムのひとつです。今後日本のホームセンターで売られるようになったりしないだろうか?あれば便利と思うのですが。


 こうして並べてみると一個一個の対策法はけっこう普通というか、あまりたいしたことじゃないように見えるかもしれない。しかしこれらを組み合わせて行うことで、庭に使われる化学物質の総量を減らし、それがだんだん小さな昆虫を呼び、結果的に土着の両生類が生きやすい場所ができてくるという事なのでしょう。野生のカエルやイモリはとても繊細です。こういう生き物は去年まで何もしなくてもウジャウジャわいていたからといって、来年もそうとは限らないもろさがありますね。自分がもしも、生き物好きを謳うならば、こういう弱い生物が少しでも生きていきやすい環境維持に努めることも、責任のひとつと考えます。

2014年4月9日水曜日

灰色の美しさ。

BION TERRALIUM CENTER 外観(ウクライナ)
この、かわいいピンク色をしたかの国では「極めて平均的」外観の建物の中身は
爬虫類のブリーディングと貿易を行うためのファシリティとして改造されている。

一般に灰色といえば「グレーゾーン」とかいって、甲乙つけがたく、善悪が不明瞭だったり、是とも否ともとられるようなものごとの中間部分を指すあいまいな響きのせいか、あまりいいイメージがないような気がします。ものごとは、白か、黒か、より明瞭にすることが好ましいという人の潜在意識みたいなものを感じますね。概念世界においても、「X をより明瞭なカタチにしたい」という理念をもって人は動いていかねば、世の全ては混沌に帰してしまうだろうから、一理あるかもしれません。でも、それでも時には灰色のままにしておくことがいい事もあるんだと、管理人は思っています。

 おととしの今頃、当時ヨーロッパに住んでいた管理人は、ひとりウクライナのホテルでのんびりと休日を過ごしていました。今は連日報道される物騒な国となってしまいましたが、その頃の首都キエフは平穏でした。そこは、スラブの歴史の薫り高く、少々モダンさもあり、かつ田舎っぽくユルい空気も漂っていて、近隣の主要都市に比べたら物価は安く、人は無愛想だが素朴で、女性達はきれいだし食べ物はうまいという休暇を過ごすのにはもってこいな場所だったのです。実際観光シーズンになれば西欧からも、反対のロシア側からもたくさんの人が訪れていました。

 この西欧と旧ソの物・人・文化・経済的合流地点であるという事は、この国を語る上で外せないポイントです。それは滞在中に寄った爬虫類の卸業をしている会社でも再確認しました。そこで所長自らにセンター内を案内していただき、爬虫類の仕事に関するいろいろな小話を聞き、一見地味なこのウクライナという場所には、国際的なビジネスをする上で大きなアドバンテージがあると気が付いたのです。政情的にいちおう安定していて(※当時)ヨーロッパ、ユーラシア、そしてアジアへとつながるパイプがあり、そのうえ物価の安い国というのは探すとなかなかありません。そういうウクライナの経済もようをほんのちょっとでも垣間見た者からすると、今、人々が集まって「EUに加盟しようぜ」「いやロシアと共に生きようぜ」とやりあっているのは非常に残念です。なぜならウクライナにとって、パートナーを絞り込もうとする事自体が国の競争力を削ぐことになるからです。この国の場合、白とも、黒ともいえないグレーの状態で、ナアナアナアとやっていくことが企業が仕事をしやすい環境をつくり、それが国の発展の鍵になる。経済がいちおう安定してるから、めぐりめぐって人々は爬虫類の事まで考える余裕がでてきたりして、爬虫類屋のようなスキマ産業も生まれてきます。まあ、これはどこでも一緒かも分かりませんが。

 今回のメモはなんだか小難しくなってしまって書いてる当人が読み返してもあまりおもしろくないんですが、爬虫類を語る上で、こういう世の中の動きもけっこう関係あると思います。たとえば、今日び日本のエキスポに、外人のブリーダーが積極的に訪れてくれるようになった発端は、もとを辿ればリーマン・ショックだし、不況後も多くのアメリカのブリーダー達が手堅くビジネス出来ているのは、先手を打ってヨーロッパやアジアのマーケットに参入する努力をしていたためでしょう。そして、変な言い方だけど、エコロジー思想や「爬虫類を飼う」という趣味が成熟してきているヨーロッパとくらべ、まだまだ過渡期でどんどん生体を「消費」するアジア、中でも特に日本と韓国、中国は、今のアメリカのブリーダー達からするとこれから開拓できる「最後の市場」と考えられています(特に韓国と、上海を抜かした中国本土のもつポテンシャルは注目を集めています)。まあ、そんなこんなで21世紀のアジアでもメジャーなトレンドメーカーは相変わらず欧米なんだな~とちょっとつまらない気もするけど、そういう現状があります。今日はとにかく、大勢力に囲まれたちっちゃい国にとって白だの、黒だの、右だの、左だのを決めつけようとするのはあまり意味ないんじゃね、といいたかったのです。われわれ日本人にとっても結構身につまされる問題だと思いませんか?

2014年4月2日水曜日


 先日の庭掃除で偶然レッドバックサラマンダーを見つけて以来、なんとなくこの種の好む環境がつかめた気がして、車で10分ほどの雑木林へ武者修行に行ってきました。結果は6匹を見つけることができ、最初のチャレンジにしてはなかなかの成果といえるでしょう(自画自賛)。写真をたくさん撮ったのでフィールドのページに別途、アップしました。こちらはまだ寒いので両爬はサラマンダーしかでてきませんが、普段ニオイガメがたくさん住んでいる川の風景も撮ってきたので、興味のある方はよかったらご覧下さい。それにしても、けっこう簡単にみつかって、すぐ捕まえられて色もバリエーションがいろいろあるなんて、なかなか楽しいイモリです。これは子供の味方だな~。日本だったらなんとなくサワガニに近いノリかもしれません。

 ところで、イモリとりをしていて気付いたことがあります。見つかる個体がどれもちょっと小さいのです(痩せているとかではなく)。動物園で、気温や湿度を管理された中で飼われている個体達は感覚的に2まわりほど大きいので、不可解でした。本種の寿命は少なく見積もっても10年以上とのことなので、成長途中の若い個体にばかり出会っているとも考えにくかった。不思議に思っていたところ、今日ナショナルジオグラフィックでこんな記事をみつけました。曰く、北米で一部の野生のサラマンダーの小型化が進んでいるという調査報告が、今週発表されたのだそうです。原因はおそらく気候の温暖化とのこと。年々、これらの動物に本来マッチした気温よりも高温気味になる期間が延びたことで、サバイバルに対してより多くのエネルギーが割かれるようになり、小さな体の方が有利になりつつあるのではないかと考えられているとか。研究者の調べた十数種9000個体のなかから6種においては、特に1980年以降、一世代ごとに平均1パーセントずつ小さくなっていっているそうで、もしそうであれば今までに本来の体の大きさから3割近く縮んだことになります。

 2009年の調査によると、近年の気候帯の北上のスピードは、たとえて言うならある植物がもともと適した気候帯に居続けようとした場合、1日1.15メートル北に移動しなければいけない位だそうです。管理人の住む州にも、いくつかの山の山頂付近にしか棲まず、絶滅の危機に瀕しているサンショウウオがいます。年々、山の上の方へ、涼しい方へと移動していった結果、そうなってしまったんだそうです。でも、いつの日にかその山のてっぺんにたどりついてしまったら、いったいどうなってしまうのだろう。空を飛ぶ翼も野を駆ける強い足もないサンショウウオ達には、もうその先はないのです。