2015年1月28日水曜日

ゾウガメを飼いたい人へ

今日の午後、ボランティア先にて。新しいフルスペクトルランプの下で談笑するアルダブラゾウガメ達。 


 ゾウガメを「素敵な生き物だ」と思っている人と、「それほど素敵でもない」と思っている人と、世論は二分している感があります。個人の感覚から言えば、前者の方が人口の9割9分を占めているので、ゾウガメ達の未来は安泰なんですが、その陰で身もだえしている後者の方には「仕事で毎日ゾウガメの世話をしている」という稀有な状況にある人々や、「誤ってゾウガメをペットにしてしまった」人々、もしくは「誤ってゾウガメをペットにしてしまった人の家族かなにかで、苦しめられている様をつぶさに観察した人」が含まれています。ともあれ、動物園でフラフラしていると月に1回くらいは「こういうカメって、お家で飼えるの?」という質問をビジターから受ける事に気が付きました。アメリカ人がとりわけ楽観的だからゆえの素朴な疑問なのでしょうか。その質問に答える前に、不肖管理人のゾウガメに対する雑感を少し書いてみたいと思います。

 私の場合、月に何回かゾウガメの世話をするうち、これらの生き物達は「制御不可能なアーマード・うし」だと思うようになりました。なんというか話しても、一切分かり合えない感があります。現金輸送車みたいな体をしていて体力500、魔力(知力)5、防御力3億5000万という感じで、こちらの攻撃はほぼ一切効きません。基本、突進してきたら止められないし、当人たちが動かないと決めたらテコでも動かなくなります。おそらく本物のテコを持ってきてもかなり頑張らないと動かせないでしょう(上の写真に写っている右の個体は体重250キロ)。そしてそのわりに嫌に素早く背後から忍び寄ってきたりするのでたまに真剣に恐怖を覚えます。仮に彼らに『オレンジ色の靴紐を、にんじんさんと間違えて♪』というような牧歌的動機があったとしても、うっかり足を踏まれるかもしれない人間側としては大変恐ろしいものです。そして、うおおおこっちへ来たぞ、と右へ左へしているうちにいつの間にかドアの前に陣取られ、えげつなく脱出経路を塞がれて絶体絶命となってしまうのです。

 もう一つえげつなきことと言えば、そのクソのでかさです(←『ウンチの大きさ♪』という雰囲気ではない)。彼らは、そのクソを腹甲の下に巻き込みながら部屋中をまんべんなく動き回ります。彼らが動き回った後の温室の床は、さながらジャクソン・ポロックの現代絵画のよう。特にオスの下腹部あたりはへっこんで「クソポケット」と言える構造になっているので、腹の下にたっぷりと汚物を付着させたまま、長時間に亘る制作活動が可能となっています。もちろん、水場にクソをする事もあります。動物園のゾウガメ達は健康のため、普通の野菜以外にも牧草をふんだんに与えられているのですが、結果、多くの植物繊維質を含んだクソが水の中でふやあ~ふやあ~っとなって、排水しようにも排水口が、その繊維で一寸の隙も無くガッチリと塞がれた状態になるんですね。だから清々しい朝の最初の作業が「腕を肩までウンコ水につかって排水口の繊維をとる(※繰り返し)」になることもざらです。それからオス達のやたらなる性欲の強さも、まったくもってえげつなきことです。これは、人間の主観によるものなので彼らにとってはひどく不公平ではありますが、温室のオスたちが逃げ回る小さなメスを事あるごとに追まわし、ブオーーーブオーーーとハッスルしている、そのくせ彼女のエサは暴力的にぶんどるのを見ていると、なんだかなあという気がしてきます。岩石に強い食欲と性欲、いわゆる「生存欲求」が宿った状態が、ゾウガメといういきものなのであります。

 なんだか言いたかった事がはっきりしなかったかもしれませんが、とりあえず、もしこれからゾウガメを飼いたいと思っている人がいたなら、ひとことやめておきなはれと申したかったのです。爬虫類が大好きな自分にとって、ワニよりも、アナコンダよりも、飼いきれる気がしない生物がゾウガメです。飼育を検討する前に、まずは1か月毎日仕事帰りに近隣の動物園のゾウガメ温室に通い、そこにいる生き物を観察してみてください。それが無理なら、毎日2時間延々腕立てとスクワットを続けながら、純粋にゾウガメの事だけを考えていられるか、自分を試してみてください。それを一ヶ月間続けてください。仕事もあるのに毎日なんてムリ!と思うかもしれませんが、実際ペットのゾウガメが大人になれば、それと同じくらいの時間を、世話という名の肉体労働に費やすことになるかもしれません。1か月も彼らの生活を見ていたら、思いのほか退屈になってくるかもしれないし、手からニンジンをあげるのだって、半年もやれば飽きてしまうかも知れません。それは、あなたにとって「ゾウガメが日常化した」証です。そしてその「日常」は、200年間続くのです(世話をするあなたが死んだ後も)。そこらへんを、もう一度思い出しながら、ゾウガメと共に暮らすとは一体何を意味するのか、飼う前にちょこっと考えてみることをおすすめします。

2015年1月20日火曜日

誤解もたまにはいいもんだ


 世の中、迷信を持たれている生き物は数多くおり、その度合いも「毒がある(実は無毒)」ようなささいなものから「天候を操る」とか「殺すと呪われる」ような大がかりなものまで、様々だと思います。しかしこと爬虫類・両生類に関するものとなるとネガティブなものも多く、未だにそれがもとで命を絶たれてしまう生き物が沢山いることを思うと、とても残念です。実際、管理人も以前北東部の田舎に居た頃は、沢に出ると釣り人に踏み殺されたミスべヘビの子供をよく見かけました。地元民の間では、彼らは別種の毒蛇と混同され、毒があると思われていたためです(毒があったからって殺していい理由にはなりませんが)。そしてぺちゃんこになった仔ヘビに出会うたびに、野蛮な連中だぜ・・・ガッデームと毒づいていたんですが、そんな自分だって自宅で巨大森ゴキブリと対峙した日には、自らの左脳が「説明しよう!このゴキブリは日本の黒ゴキブリに200%酷似しているが本来森林にしか棲まない自然界の使者であり、大切な生態系の一員なのだ。ちなみにゴキブリは良質なタンパク質と各種脂肪酸に富んだ未来の食材でもあるのだ・・・・・・」と説くかたわら、勢いよく「メーン(右脳)」と丸めた新聞紙を振り下ろしているので、野蛮さという面においてはさほど変わりはありません。

 こんな迷信ですが場合によってはプラスに作用するケースもあるんだと、先日親戚のロシア人達の話を聞いていて思いました。曰くある夏、彼らが保養地のあるカスピ海沿岸部の街で宿をとったところ、部屋に大きなバルカンヘビガタトカゲ(ヨーロッパアシナシトカゲ)がニョロニョロと侵入して来たそうです。都会から来た彼らからしたらまったく馴染みのない生き物だし、何しろ美川憲一みたいな目をしていて気味が悪かったので叩いて追い出そうとしたところ、宿屋の主人やスタッフが「その生き物は宿を害獣から守ってくれるので、苛めないでくれ」と言いに来たと言います。しかし、この生物に馴染みのある方は気付いたかもしれませんが、このトカゲ、実は極めて非力で害獣と激しくファイトして、勝利する力などないんですね。やばいのは見た目だけで、実際の所は動けない鳥の雛や卵、小さな哺乳類の赤子や、弱そうな虫を追いかけまわして食べる位が関の山だろうと思われます。しかしその田舎町では「アシナシ=とても役に立つ生き物」というポジティブな迷信が浸透しているおかげで、彼らの生活と平穏は守られていたのです。

 迷信とは結局、我々人間の中のどこかの不条理で原始的なところからやってくるアイデアの数々であり、単に話の題材としては非常に面白いものがあります。しかし、勝手な思い込みで、良く知りもしない生き物を殺すことはやめたいですね。今日、こんなとりとめのない話をそもそも思い出したきっかけは、アホロテトカゲが地元民に大変恐れられているという話を小耳にはさんだことによります。なんでもこれらのトカゲは現地では人間が大草原で我慢がしきれず「大」をするハメになった時、後ろからこっそりやってきて尻の穴から人体に侵入し、内臓を食い破ってバラバラにし、襲われた人間はゆっくりとしかし確実に恥ずかしすぎる死を迎えると信じられているのだそうです。腹を抱えて笑ってしまいましたが、こんなふうに畏怖の対象になることで、彼らの静かな生活が守られるのだから、概ねいいことのように思います。

2015年1月14日水曜日

トルコナキヤモリの近況


 前回の記事にアイコンぽっちや+1をくださった方、ありがとうございました。応援してもらった気になり、及び腰だった腰も完全に通常位置まで戻ってきた感(?)がありますので、その腰をバッチリ据えて頑張りたいと思います。「大きいロンギ」の方ですが、2日前に投薬前の最後の給餌も済み、これから数日静養してから、治療を始めることになっています。


 年末年始とアメリカのギフト送り合戦が終息する今頃の季節、贈り物が入れられていた箱や包装紙をどうするかというのが自分にとっての課題になります。管理人は後期昭和人、と言っても運転中無意識に「きらいだよ」とか「浪漫飛行」を大声で熱唱する程度に留まるマイルドな昭和人ですが、祖父母世代の教育の名残なのか、食糧品とか、まだきれいで使えるものを捨てることに対しては強い抵抗感があるんですね。それで箱などはいつも名残を惜しみながら丁寧に平らにして仕分けし、リサイクルの日に出すことが最低限、ストレスに苦しまないためのプロセスとして大事になっています。そのようなわけで週末にまた箱をぱったん、ぱったんとつぶしていたのですが、その中に綺麗なオフホワイトの厚紙で出来た箱を見つけたので、こりゃいいとばかり、「即席写真スタジオ」を作成して、どうやら大人になったらしいうちのヤモリの写真を記念に残すことにしました。丁度人間達も成人式を迎えたことだし。(新成人の皆様、おめでとうございました。)


 ハッチしたてのポヨポヨ状態で拾ってから9か月が経ち、すっかり大きくなりました。といってもあたまからしっぽの先まで10センチたらずの小さなヤモリです。写真左は、等倍だとほぼ実寸大位の倍率になっています。右脚の中指が欠けているのも写っていますね。これはベビーだった頃に、拾われるキッカケでもあった、粘着テープの試練を乗り越えたという思い出の指飛びであります。

 今日は紙箱効果なのか、本物に近い色彩の写真がとれました。「すあま」の体色については以前、透き通ったピンク系の時と、褐色系になる時とあると書きましたが、たまに写真の様な白っぽい地に暗褐色のフレックル模様になることもあります。これは「すあま」が危険を感じてビビッている時の色彩なのです。こうなると隙を見ては管理人の視界から逃げ出そうとしはじめ、いざダッシュすれば自然界の端役感たっぷりの走りを見せてくれます。なんかクネクネ・ばたばたする割にそんなにスピードは出ないという。そうやって考えると、繁殖力も旺盛と聞くし「餌」としては結構優れた種なのかもしれません(爆)。


2015年1月11日日曜日

ボアコンの投薬開始

「いいブツが入ってますぜ、旦那」

 一年前、微妙に体調を崩して病院にかかった当宅のぺルビアンロングテールボア、通称「大きいロンギ」ですが、以降飼育環境の改善に努めてきたものの、その健康状態にはぼんやりとした不安感というか、「なんとなくパーフェクトではない感」が漂っていました。結果、今週受けたフォローアップの検診でやはり上気道の感染症が根治していない事がわかり、今後何かの拍子に悪化する可能性があること、また生体の活発さや肉づき等、状態自体はとてもよく治療に十分耐えられることを踏まえて、投薬に踏み切ることになりました。処方されたのはエキゾチックアニマルの間ではよく使われる二種類の抗生剤(写真上、これで一種類・3週間分。もう一種類は冷凍庫の中)で、筋肉注射になるので、なるべく刺激が少ない薬を処方してもらいました。

 困ったのは「あなた自分で出来るでしょ」と、全ての投薬注射を自宅でやることになった点です。針を入れる場所は頸部のちょっと後ろの方にするのですが、今までヘビの首がどの辺なのかなどとは考えたこともなく、「変な所に差しちゃったらどうするべ」という不安感と共に、今若干及び腰になっています。うちのヘビの場合、独立してから3番目のサドル周辺がその場所にあたるようで、ボアコンは柄があるから助かるものの、無地のヘビだったらたぶん慣れるまで全然分からなかったであろうと思われました。


 検診中の一コマ。もうすぐ脱皮期間に入るのでちょっと色味などがぼろかったのが残念ですが、今回も全く人手を煩わせることなくいわれた通りに計りに乗ったり、綿棒でチョンしただけで大人しく口を開けたりして、獣医師の先生に喜ばれていた。因みに前回、「これは爬虫類医療の現場において革新的アイテム」と絶賛された「日本の洗濯ネット」は今回も再び絶賛され、米国アマゾン経由で購入できるかどうかが、真剣な話題になっていた。補綴してくれているのはベテランのセルビア系の美人看護師、彼女を見るのが楽しみでこの病院に来ている熟達したいきものの扱いに、いつも自然と感謝の気持ちがわいてきます。大きいロンギよ、これから一ヶ月、一緒にがんばろう。

2015年1月7日水曜日

注意、フトアゴで人をぶってはいけない

このあいだ即売会の会場で出会ったフトアゴ達。「暴力反対ー!」

 おとといのパリでのイスラム過激派のテロについて、ご近所のイスラム教徒の人が「ちょーウザい」とぼやいていた。ニュースにのるような過激派の活動は、経典の「自分達に都合の良い勝手な解釈」の結果であって、2001年の同時多発テロ以降、既にかなり下落していた世間でのイスラム教徒への評価をさらに貶め、「平和の敵、狂った人々」のようなイメージ作りに貢献している、と言っていた。そしていつもとばっちりを食うのは彼女曰く、自身の様な「純正で争いを望まない」イスラム教徒であり、極端な一部の人の行動によって、また暫く世間で肩身の狭い思いをすることになるかもしれない、ともらしていた。これを聞いて「どこでも問題は一緒だな」と思ったのは、私達両・爬愛好家の間でも(テロリズムなんかと比べたら全くスケールの小さい話ではありますが)似たような事態をたまに目にするせいかもしれません。どれだけ沢山の善意ある飼育者達が、自然を愛し、自分の飼ってるいきものを大切に世話していたところで、反社会的な行動をとる人が1人でもいれば無意味になりえるという、あのパターンを。

 最近、フロリダの爬虫類ショップで経営者が激高してスタッフをフトアゴヒゲトカゲで殴ったという話が、バカニュースとしてけっこう大きく報道されていました。この経営者はトカゲを使って複数回殴打したほか、トカゲをその店員の口内に突っ込んだかどで逮捕されており、トカゲの安否は確認されていないそうです。「アホやな」と笑っていいのか、「なんてことをするのか」と怒っていいのかなんなのか分からないこの事件、舞台となった爬虫類ショップの名前を聞いて、なんか聞き覚えがあるなと思っていたら、2年前ゴキブリ食い競争をやって死者を出したお店でした。この店主はそのほかにも薬物所持で捕まった前歴などもあり、絵にかいたような無軌道者のようなんですが、こういう事件があると、爬虫類を飼ってる人のイメージがまた少し微妙になります。事実無根なうえにすごく偏ってると思うんですが、東海岸において「ふつう~の一般人」が思う爬虫類を飼ってる者の印象とは、「何か人とは変わったことをしたいティーンネイジャー」か、「野生の生き物から搾取する、低学歴、低所得、刺青だらけのあやしいプア・ホワイト」というもので(西海岸ではまた印象は異なるはず)、基本的に世間の風当りは強いと感じます。しかしこれは、一部のアブノーマルな人々を拡大解釈するメディアによるところも大きいと思うのです。けっきょく、報道の抱える根本的な問題というのは記事がお金を絶対に生み出さなければいけないというところにありで、書き手は読み手の注目を得られそうなキャッチーな事を書かなくてはいけなくなったり、お金を出してくれる会社などに考慮した文を書かなければいけなくなったりして、目立ったもん勝ち(悪目立ちも含む)な世の中づくりに貢献してしまっているよなと、考えていた今日です。

2015年1月3日土曜日

今年もよろしくお願いします、

(c)  yosemitenationalpark ※くっきり写らない時はリロードしてください

 お正月三が日でだらだらしている間に色々読むことができ、ブログにも爬虫類の密輸の話題でもメモしておこうかと思ったのですが、新年そうそうそんな話は憂鬱すぎると思ったので、やめました。そんな話より本当はもっと「癒し」とか、「ふあふあ」したことを書きたいのですが、どういうわけか脳内にそっち方面の話題はいつも欠乏してるので(「ふあふあ」しているのは腹回りだけ)、そこのところは無理をせずカリフォルニア・ヨセミテ国立公園のシエライモリ達に外注しようと思います。これがアウトソーシング事業だ。

 シエライモリ(Taricha sierrae、上のビデオ)は以前はカリフォルニアイモリの亜種だった種だそうで、確かにこうして見ると素人の自分には見分けがつきません。けっこう激しい毒を出すそうで、触る時手にわずかな傷があったりなんかするだけで肩まで腫れ上がるとか。しかし、飼っていて人に慣れると毒は出さなくなるんだそうです(毒は特有の匂いがあるので分かる)。それにしても、魚でも虫でもそうですが、清流の生物を見ると心が潤いますね。天然の山の水の中をすいすい、えっほえっほしているイモリ達も実に気持ちよさそうです。そんなのんびりした光景をよそに、両生類、というか地球の生物全般的に「六度目の大量絶滅期」に入ったと考えられてきている近年、これらの動物達の平和と繁栄は自分達にもかかってるんだということも、心のどこかに置いておきたいです。