2014年11月10日月曜日

不定期更新「盗まれた世界」3

ノマド生活者


 1965年、ヘンリーA.モルトはクラフト食品※1で販売員の仕事に就いていた。この仕事はモルトに会社のワゴン車と、フィラデルフィア市の準郊外を自由に巡回出来る環境を与えていた。週末、動物園を訪れるために、モルトはこのワゴン車を勝手に乗りまわした。6歳頃から始まった彼の爬虫類採集癖-学校帰りに美しいキングスネーク達を入れた布製サックを背負って歩いていた-は、成長と共により多くの種、より危険な種への探求へと移行していた。当時25歳のモルトは実家の地下室で多くのコブラ、ガラガラヘビ、ドクトカゲ、そしてビルマニシキヘビ達を養っていた。

 クラフト食品は若くてエキセントリックなこの販売員を歓迎していた。雇われてからほんの一ヶ月たらずで、モルトの描いたコブラのイラスト-直立し、フードを広げた-はクラフト食品の社内誌The Kraftsmanの表紙を飾った。ページをめくると、サーモンローフのチェダ-ソースがけのレシピの隣に、モルトに関する記事が掲載された。クラフト食品の特派員が派遣され、モルトと彼の「普通じゃない趣味」について報道したのである。記事の中でモルトは嬉々として、彼の趣味が必ずしも法に則ったものでは無い可能性をほのめかした


 次にモルト君は、コレクションの中で彼がおそらく最も価値があるだろうと考えている個体・・・オールトラリアから連れてこられた美しいダイアモンド・パイソンを紹介しました。彼はこのヘビの為に90ドル(※2を支払ったそうです。モルト君によると、このダイアモンドパイソンはオーストラリアとパプアニューギニアの一部にしか生息せず、実際のところ急速に絶滅しつつあるのだということです。そのためオーストラリア政府はこれらのヘビの輸出を禁止しているのです。

 「ではどうやってあなたはこのヘビを連れ出したのですか?」

と聞くと、モルト君は黙って、しかし私にむかって策謀めいた一瞥をよこしたのであります。


 この時期、マヨネーズの瓶をカウントしカビの生えたチーズのクレジットを返金をする一日が終わるとモルトは、両親の家の彼のベッドルームに引きこもり、当時動物園や映画スタジオの間で出回っていた動物商名簿をもとに海外のディーラーに手紙を書いたのだ。モルトは、動物園ですら持っていないような珍しい生き物のみを欲していたので、当時野生動物の輸出に制限があったり、アメリカ合衆国との取引を禁止された国々-オーストラリア、アルゼンチン、共産国の数々-のディーラーに接触した。「人がやらないような方法もやってみた」、のちにモルトは言った。「例えば私がナショナル・ジオグラフィックで、宣教師がヘビを手に持っている写真を見たとする。そこで、彼にも手紙を書いてみる。こうした手紙の殆どは、届目的地に着く前に失われた」





(つづく)
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著者Jennie Erin Smithは科学と自然史に精通し多くの受賞歴を持つフリーランスのサイエンス・リポーターであり、頻繁にTimes Literally Supplementに掲載されている。彼女はフロリダで数年間環境リポーターを務めたことがあり、そこで著作Stolen World (2011)を書くのに必要な多くのコンタクトを得た。

※1 乳製品で有名な大会社。
※2 2014年現在の貨幣価値だと672ドル相当。