2014年6月22日日曜日

プリンセス・ダイアモンドは二度消える


 このブログ「へびにっき」ではじめて北米にて世界初のリューシのボアコンが生れたらしい~と書いたのは2011年のことでした。しかし2年後の記事内で、どうもそれがインチキだった、という後日談にもふれたと思います。その時点でリューシスティックのボアコンがキャプティブ下に存在する事は間違いのない事実だったものの、実はそれは純粋に自然が作り出した特別な個体で、作出者を名乗ったブリーダーはただそれを違法な手段で入手していただけだったことが発覚したためです。最近明らかにされた事の顛末はこんな風でした。 ※長文なので読むのメンドクサイ人はふたつめの「・」の後の段落だけ読んでくだせ~。


 時を遡って2006年、ブラジルはリオデジャネイロ州二テロイにて、大変美しい純白のボアコンストリクターの子供が発見されました。このボアは、世界で今までに類を見なかった「野生由来のリューシスティック・基亜種ボアコンストリクター」だったのです。リューシスティックといえばさまざまなヘビのブリーダーが目指すある一つの「ゴール」とも言える表現で、繁殖家達にとってはまさしく「聖杯」と言ってもいいようなものです。この個体はすぐさま研究者たちによって、私立二テロイ動物園の研究施設に収容されました。当時この動物園は、情報をキャッチした世界中のボアコン・ブリーダーからの交渉のコールが殺到しました。しかし、ブラジル政府の打ち出す野生動物保護政策は特に厳しいことで知られ、他国のブリーダーが、とりわけ商用目的でこの個体を国外に持ち出すことは不可能でした。

 同時期、アメリカ人のある男がこのヘビの魅力に取り憑かれていました。男の名前はジェレミー・ストーンといい、ユタ州で爬虫類店を営むボアコンストリクターのプロブリーダー業を営んでいました。磁器のように真白なリューシスティックのボアを生み出すことは彼の夢であり、目標でしたが、長年かかっても未だ成し遂げえなかったそれが自然の力によって魔法のように産み出され、突如目の前に現れたのです。と同時にブラジル当局の政策についてもよく知っていた彼は、このヘビを入手する事は、少なくとも合法的には不可能だと知っていました。

 3年後の2009年、ストーンは「『プリンセス・ダイアモンド』プロジェクト」を立ち上げます。自身の手による計画繁殖と選択交配の末得られたとされる、世界初のボア・コンストリクターのリューシスティック個体『プリンセス・ダイアモンド』を祖として、さらに純白の子供達を作出していこうというものでした。しかし、ストーンが頻繁にユーチューブ等で宣伝していたこのヘビの映像は、この時二テロイ動物園から消えていた純白のヘビを捜索中だった、関係者の不審を招きました。ビデオを仔細に観察したところ、そのいなくなった個体と同じ箇所に、同じような複数の暗色の鱗が確認されたのです。そもそも非常に珍しいミュータントのヘビです。共通点はたったこれだけであっても、同一個体と同定するには不足のない情報とし、ブラジル国家環境局(IBAMA)は、この男とその周囲に焦点を絞って静かに捜索をはじめました。

 2011年、IBAMAは二テロイ動物園を強制閉鎖します。理由は「収容動物達の扱いに不審な点があったため」。この動物園からはそれまでに、実に635種の動物が「消えて」いました。書面上は「死んだ」と記されていたこれらの動物種の数は全収容種のうちの実に3/4にあたる数で、この動物園のキュレーターが何らかの違法な商業行為に関与していることは、もはや疑いの余地がありませんでした。動物園の獣医師は白いボア『プリンセス・ダイアモンド』について、「キュレーターからある日突然、『あのヘビは死んだ』と言われた」と供述しました。そして、ブラジル国家警察はその『ヘビが死んだ』2009年、時を同じくして、ストーンが「たった1日だけ」ブラジルとガイアナの国境の村に入国し、そしてアメリカへ向けて去っていた事実、それと同時にストーンの預金口座から、2550万円相当の金が引き出された形跡を突き止めました。そして2013年、種々の調査と検証を終えたアメリカの連邦裁判所は、ストーンを、生物を違法な手段で輸入したかどで起訴しました。この訴訟は2014年の今現在も続行中となっています。

 ブラジルの動物園から一度消えた『プリンセス・ダイアモンド』。2013年の家宅捜査の結果、ストーンの自宅からは発見されませんでした。ストーンはこのヘビについて(同時期にユーチューブにポストをあげていたにも関わらず)「ヘビは死んだので、裏庭に埋めた」と供述したそうです。『プリンセス・ダイアモンド』は、2011年に同じく純白の仔を複数匹産んでおり、これらのヘビはそれぞれアメリカ、カナダ、欧州のブリーダーへと売却されています。2013年にはイタリアのブリーダーが第三世代の作出にも成功し、一部で話題となっていました。次なる議論はこの『プリンセス・ダイアモンド』が本当に死んだのか?ということ。現時点で真相は謎に包まれています。ブラジル当局は今後も、『プリンセス・ダイアモンド』はどこかで生きていると考え、見つけ出して保護するという意志をもって調査を続けていくそうです。


 それにしても、ボアコンの品種改良、のみならず「ハーペトカルチャー」全般の歴史を振り返ると、「法的にアヤシイ(もしくは違法な)行為の歴史」といっても差支えないような、こういうサイドストーリーはけっこうぽろぽろ出てきます。単なる市井の爬虫類好きでアウトサイダーである管理人ですら、ヒトから話を聞いたり情報収集をしている中で、図らずもそういった事実に突き当たってしまい、気まずい思いをすることは無きにしも非ずです。最近では、究極的には、自分なども含め「爬虫類飼育がシュミです」と言う人は、過去から未来にいたるどこかの時点において、または自然から獲ったものを売ったり、買ったり、所有したりという行為のどこかにおいて、違法もしくは法的にアヤシイ現状に加担している可能性が高く、間接的な共犯者なんだと考えるようになりました。自分の飼っている生き物はCB個体だから大丈夫~と思っても、それらの個体の親個体たちをたどると、そう遠くない祖先は密輸されたものだったりすることだってあるのです。また自分達のようないわゆる「購買者層」の存在感が、今日もどこかで行われているいきものの違法な採集の原動力となっているのは、想像に難くありません。だいじなのはこれらを踏まえて、我々ホビイストは「倫理」について常に考えて続けていかなければいけないという点です。それがゆくゆくは世界の爬虫類や両生類、のみならず地球上のさまざまな動植物達の命運を変えていくはずだと考えます。

 因みにこの白いボア、まだ生きていると思いますか?
 管理人は、殺されちゃってどっかに埋められたに一票。
 今回の記事はナショジオ・デイリーニュースおよび全米弁護士会ユタ地区の記事を参考にしました。