2014年10月15日水曜日

フトアゴ飼いの姉さん、事件です(※兄さんも)

とあるエキスポにて ベンダーのおばちゃんが連れてきていたフトアゴの一個体。あきらかにおばちゃんの生活様式を「習得」している (うそ)

 爬虫類って実際、どのくらい頭が良いのか?という話題は以前から度々触れているけれど(話その1その2その3)、また何か面白い事が分かったようなので忘れないうちに書き留めておく。

 最近とあるサイエンスジャーナルに載っていた話によると、爬虫類の一種Pogona vitticeps(以下フトアゴヒゲトカゲ)を使った実験によって、彼らに他の個体がやっている事を観察して習得する、社会的学習能力があることが初めて確かめられたという。イギリスのリンカーン大学の研究員チームによって行われたこの実験の概要は、まず12匹のフトアゴヒゲトカゲの中から1匹を「お手本役」として、ケージの中に設置された網戸を開け(網戸はふすまのように横滑りに開く)、隣の部屋にあるミルワームをゲットするトレーニングを受けさせた。そのうえで、残りのトカゲ達の半数にはこの「お手本役」がドアを開けてミルワームを取るところを事前によく見せておき、残りの半数には何も見せなかった。こうして区別された2つのグループが各自網戸つきケージに放された時、果たして、事前にお手本を見たグループのトカゲたち全員がミルワームをとることが出来たのに対し、何も見なかったグループのトカゲは殆どミルワームまで辿り着くことが出来なかったという。

 実験でフトアゴヒゲトカゲたちが見せた「社会的学習能力」というのはとても高度な認知能力が絡んでくるもので、従来ヒトをはじめとする一部の動物にしか見られない行動だと思われてきた。他の個体がやっている技を獲得してそれを正しく使うためには、目で見たままの行動をまねるだけではなく、その裏に隠された「他者の行動の真の目的」という、抽象的な概念を理解することが必要だからだ。自然界にはオウムが人間の言葉を喋るような感じでいわゆる「サルマネ」が出来る動物は多いものの、「社会的学習」が出来るのは一般的に高等とされる動物に多く、まさか爬虫類にもそのような能力、というか脳力が備わっていた事は最近まであまり知られていなかった(因みに類人猿にはとても洗練された認知・社会的学習能力が備わっている事が分かっているので、このサルマネという言葉は彼らにとってたぶん非常に失礼であり、NGワードになるべきでしょう)。

 個人的に思うのは、この実験の甲乙は置いておいて、こうしてフトアゴが人為的に作られた環境の中で本来の習性から一歩はみ出た「ふすまを開ける」という能力を発揮してくる所も面白いと思う。動物園の生き物などを見ていても、本来単独生活者だったり全然別の地域で暮らしている爬虫類同士が何らかの理由で同居を余儀なくされた時に、個体間に予期せぬヒエラルキーが現れたり、共同作業をはじめたりする場合があると分かってきている。爬虫類に限らず個体の隠された能力というのはこうして今までの常識では遭遇しないような題材に対峙した時、浮き彫りになるものなのかもしれない。自分の人生においても、例えば何かとんでもなくありえへん事態が起きたならばそれはひと皮剥けるチャンスと捉えるべきなのかもしれない。またひとつ爬虫類に大切なことを教わってしまった(のか?)。