2013年10月26日土曜日









#BLACKFISHを見た。これは飼育下のオルカが人に危害を加えて(殺して)しまった個々の事件例を軸に、実際の元飼育員との対話を交えながら、この生き物と人間との関係性を考えるというドキュメンタリー作品。この手の話になると過度に感情移入したメディア作品が多いのではじめはあまり興味を持っていなかったけど、野生下でオルカの群れがいかに家族をもとにした「社会」の中で生き、またそこから隔絶された孤独感とストレスの中で育つ事がどのように個体に影響を及ぼすかについて少し知る事ができた。

 比較的知られた事実だけど、オルカは普段家族を基礎とした小規模な群れで暮らし、「言語」に相当するようなフレーズを持っている。生活パターンや構成の違う個々の群れは方言に相当するようなサインを常にお互いに送りあっていて、それが包括的に「群れ独自の文化」のようなものを形成するのだそうだ。各国・各地の水族館がオルカショーに着目した7、80年代は、この事は殆ど知られていなかった。そのため世界のさまざまな場所から若いオルカが連れてこられ、一緒の水槽に入れられた。これは、例えば長州藩の人と松前藩の人と、蘇芳藩の人が一箇所に軟禁されているような状態だ。彼らの場合「同じ日本人で似たようなものを食べる」以外は、文化も、習慣も、似ているようで違うのだ。ひょっとしたらそのうち子供くらい出来るかもしれないが、精神的に充足した人生は送れるかと言えば、それはまた別の問題だ。またもしその中に会津藩の人が居れば、何かの拍子に長州藩士と決闘になる可能性もある。水族館の話にもどると、実際、飼育下で何も問題なく成長したオルカ同士がある日突然攻撃しあい、タンクメイトにケガさせたり、殺してしまう例は今までにいくつも観察されているという。このような行動は野生下では殆ど見られないそうである。

 ドキュメンタリーの中でストーリーのメインに据えられたフロリダシーワールドのオス「ティリカム」は今まで少なくとも3名の飼育員の死に関与しており、一部の専門家は30年に渡る水族館生活の中で、この個体が精神に異常をきたした可能性を指摘している。このオルカは数年前に自分も実際見たけれども、隔離された水槽の中で特に何をするわけでもなく、くるくると螺旋を描きながら水槽を上下しているのが印象的だった。

  脱線するけど、使役動物としての歴史の長いゾウも非常に家族の繋がりが濃い生き物で、若いときに群れから狩りだされて捕獲されたゾウがサーカスなどで使われる日々を過ごすうち、ある日突然凶暴化するケースというのが散見されるそうである。もちろん季節やホルモンバランスにも左右されるだろう問題だけど、ほかにも要因があるような気がする。ゾウやサル、オルカの脳を調べると、感情を司る分野が相対的に大きいのだという。本来一生涯を共にするはずだった家族との別離はこれらの動物にとって、癒やしがたいトラウマを残す可能性があるとはいえないだろうか。程度の差はあれ感情をもち、社会性のある生活を営む動物を飼育することはさまざまな工夫やケアを必要とするだろうし、またそのことの是非はともかく、過去に動物園が払拭しようとしてきた「見世物としての動物」のイメージを水族館もまた、脱却すべき時期に来ているように思う。